
今回はお客様インタビュー第6弾、スウェーデンに本社を置き、世界各国に4000万曲以上を配信する音楽ストリーミングサービス「Spotify」の日本法人「スポティファイジャパン株式会社」にお邪魔してアプリ分析ツール「App Ape」をどう普段の業務に活用されているかをマーケティング担当ソバジエ・ジュン様(※以下、敬称略させていただきます。)へインタビューして参りました。それでは早速ご覧ください!
ー 本日はよろしくお願いします。
ジュン:よろしくお願いします。
ー 現在の業務内容を教えてください。
ジュン:アジア全般を対象にコンシューマーマーケティングの仕事をしています。
日本も含めて、現在サービスを提供している国・地域は、マレーシア、シンガポール、フィリピン、台湾、香港、インドネシアとなります。
ー かなり広い地域を担当されていますね。
ジュン:そうですね。現在はサービスを提供しておらず、今後計画している国についても対象となります。
Spotify流のマーケティング手法とは
ーマーケティングはどのような手法を用いて実施していますか?
ジュン:カスタマージャーニーの観点で見た際に、まずはAwareness(認知度)を上げ、その後、Acquisition(獲得)、Retention(継続率)、Engagement (ブランドと、ユーザーの親密さ)といった所まで目指していきます。
具体的にはキャンペーンを通じて認知度上げるということもしますし、日々の運営においては、“パフォーマンス・マーケティング”、いわゆるインストールに繋がるマーケティングに加え、エンゲージメントを高めるためのリターゲティングのマーケティングなども実施しています。その一方、ストリーミングというサービス自体にまだなじみの薄い方が多い日本においては、他国以上に丁寧にサービスに関する理解を深めていただく啓発活動もしなくてはいけないと考えています。
ー やはりデジタルのマーケティングが中心になりますか?
ジュン:そうですね。デジタルマーケティングを中心にしつつ、例えば30日間使っていないユーザーに対し、「また使ってみない?」といったメッセージをメールやディスプレイバナーを使用して送るようなCRM的アプローチも行っています。
ー 逆にリアルな場でのマーケティングは実施されますか?
ジュン:2016年の年末にはCOUNTDOWN JAPAN フェスに体験型ブースを設けました。またKitsuné というフランスのレーベルが日本ではじめてイベントをおこなった際に協賛もさせていただきました。このように音楽フェスをはじめとする音楽に関連するイベントに出展していくということは実施しています。

日本でのサービスローンチに関して
ーサービスローンチにあたり苦労した部分はありますでしょうか?
ジュン:ありがたいことに、Spotifyのサービス開始を待ちわびられていたユーザーが多かったため、当初から予想を上回る数の方にご登録いただくことができました。2016年の9月末にまずはエントリー制でサービスを開始し、以降6週間は招待コードを持っている方のみ利用いただけるという形でした。それが逆にユーザーの関心を高めることにつながり、当初の想定を上回るユーザーを得ることができました。
ー想定より良いスタートを切れたということですね。素晴らしいです。
ーローンチに際して他にどのようなマーケティング施策をしたのでしょうか?
ジュンさん:サービス開始に先駆け、宇宙飛行士の毛利衛さんを起用したユニークなサービス紹介動画を作りました。
その動画をフックにSpotifyのサイト(Spotify.com)に誘導し、メールアドレスを登録していただきました。その際、すぐに招待コードを発行するのでなく、あえてお待ちいただく形を取りました。バナー広告等も実施しましたが、その際もあくまでもSpotifyのサイト(Spotify.com)へ誘導するだけにとどめました。
英語では“pent-up demand” – 繰延(くりのべ)需要(商品などが入荷できずに需要が累積すること)-というのですが、あえて要求を作り出す、という戦略でした。
ーなるほど、その手法は日本市場へ対しての独自のものなのでしょうか?もしくはSpotify社として新規参入する際の定石なのでしょうか?
ジュン:過去にも他国でのサービス開始前に同様の手法を使ったことはあります。ただその期間中にCM動画を制作し、メディアなどで露出させたのは、今回が始めてです。またDJ Taroさんや、ONE OK ROCKなどの音楽ファンに支持されるインフルエンサーにも呼びかけました。そして彼らをフォローしている方々にも招待コードを発行しました。
日本ではまだSpotifyというブランド名自体が知られていなかったためインフルエンサーを上手く活用する方法を選択しました。
App Ape導入のきっかけ
ー 続きまして、App Apeのどのような機能/サービス内容が御社にとって導入のきっかけになりましたでしょうか?
ジュン:「App Ape」は音楽だけでなく様々なジャンルの市場情報が細かく見れることです。もうひとつはMAU・DAUまで掘り下げたデータを見れる点が決め手でした。
ー 同業他社のツールのご検討をされましたでしょうか?
ジュン:グローバルでは他社のツールも導入していますが、より掘り下げたデータを確認したかったのでApp Apeを選択しました。
ー ミュージック以外のジャンルはどういったジャンルをApp Apeを使って調べますか?
ジュン:ゲームなどのジャンルを見ることが多いです。

社内でのApp Apeの使われ方
ー App Apeを社内のどのような方が使われていますでしょうか?
ジュン:基本的にはマーケティングチームの中で使用しています。レポートの際や、ミーティング時に参照しています。情報は社内全体で共有しています。
ー どのような頻度で代表にレポーティングされるのでしょうか?
ジュン:週次での全体ミーティングの際、レポーティングしています。
ー App Apeを使われて業務が改善した実感はございますか?
ジュン:現状を正しく把握し、ゴールを設定する上で役に立っていると感じます。
ー たしかに明確な数値がないと目標は定められませんね。
ジュン:その通りです。Spotify はローンチが60カ国目なのですが、いままでの事例は日本の市場に当てはまらないことが多いです。それは配信サービスをそもそもわからない消費者が多いためだと考えています。去年はインドネシアでローンチしたのですが、インドネシアには既に配信サービスで音楽を聴くという土壌があったので、日本で同様の手法は使えませんでした。
ー 明確な目的でのご使用をいただいてありがとうございます。
ジュン:「App Ape」を使い始めて意思決定の際に明確な情報を元に判断できるようになりました。
App Apeの良く使う機能とは?
ーどの機能を良く使われていますか?
ジュン:先程も述べた通り、MAU・DAUを注目しますね。男女年代の比率がひと目で分かるのは貴重な情報ですね。
我々には明確なターゲットはありますが、それ以外の世代にもSpotifyを使ってもらえる機会があるのではないか、という判断をする際に参考にしています。
カスタムレポートに関して
ー 弊社からお出ししているカスタムレポートはどのような場面でご活用いただいていますか?
ジュン:日本の市場特性を社内の戦略チームに共有するために使用します。
日本はまだストリーミングが始まったばかりですし、またゲームアプリの人気がとても高い独特な特徴のある市場なので、それを正しく理解してもらう必要があると考えます。
ー 世界各国でローンチされているSpotifyですが日本の市場をどのような位置付けで捉えていらっしゃいますか?
ジュン:まずグローバルブランドとして、ある程度グローバルのブランディングに沿う形で展開していますが、日本市場が他の市場とは全く異なるという認識は社内でも浸透していますので、日本でのサービス開始の際は日本のオーディエンスにしっかり伝わるようなマーケティングを展開しました。
具体的には先程も申し上げた通り、日本人のキャスト、日本人のカメラマンを使ってCMを制作しました。これは弊社として初の試みです。プロダクトは言語、コンテンツの両面でローカライズしています。
日本でのローカライズに関して
ー 日本向けにローカライズした際の特徴的な部分を教えてください
ジュン:まず日本でのサービス開始に先立ち、日本人はどういう時、どういう場面に音楽を聴くのか、音楽を聴いた後に何をするのかなどを調査しました。例えばアメリカですと運動をする時に音楽を聴く人が多いです。日本ではそれが比較的少ないようでした。また日本向けのプレイリストも用意しました。支払いについてもコンビニ支払いなどに対応しました。
ー現在日本のSpotifyの中心のユーザーと今後展開していこうとしているターゲット層を教えてください
ジュン:当初は男性がやや多かったですが、男女比率も近づいてきました。年齢層は若い世代、20代をさらに増やしていければと考えていければと考えております。
海外サービスが日本参入する際のアドバイス
ー 海外のサービスが日本に参入する際のアドバイスがあれば教えてください
ジュン:まずは日本の市場分析をしっかりすることをすすめたいです。消費者の考え方や、日常生活自体が他国とは全く違います。例えば通勤時間が長い、とか。多くの人が満員電車に乗って通勤をするであったりとか。これはアメリカには無い光景なので。
海外のサービスの担当者は日本に住み、実際にカルチャーを体感することまでしないと、特にマーケティングの観点でいうと苦労すると思います。
またメディアも全然異なることも特徴です。本国でやっている戦略をそのまま持ってきても通用しないので、日本についてしっかり学ぶことが重要だと思っております。
日本では「いままでにないものを試してもらう」のは他国以上にハードルが高いと感じます。簡単な気持ちでいると失敗するかもしれません。
またブランド名の力を上手く活用できるかも重要です。日本において既に自社のブランド名が浸透しているのかをサービスインする前に調査すべきと思います。
ー Spotify JAPANとしての今後の展望をお聞かせいただけますか
ジュン:「音楽を聴く」=「Spotify」という認識を広げたいと考えています。Spotifyで音楽を聴くということはアーティストの収入にもなるということを日本の方に理解していただきたいと考えています。会社のミッションとして「アーティストとファンを繋ぐ」ということがあります。アーティストやレーベルが参照できる有意義な情報も提供しています。アーティスト側からもSpotifyで配信したい、という風に思ってもらえたら嬉しいと考えています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。インフルエンサー・マーケティングや、カスタマージャーニーを意識したマーケティング方法等、海外のサービス担当者の方にとって非常に参考になるお話を伺えました。世界をリードする音楽サービスのSpotifyですが、日本での更なる盛り上がりが楽しみです。今後もスポティファイジャパンさんのご活躍にご期待ください!
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