「メディア×アプリ〜現在地と未来〜 #1」MixChannel事業責任者 西村 洋平氏

0 SHARES

メディアのアプリ化がここにきて急速に拡大しています。
既存のテレビや新聞、ラジオのアプリ展開に加え、新興の動画メディアからSNS、ウェブメディア、アプリメディア、さらにオウンドメディアまでアプリ化が加速しており、百花繚乱の様相です。

それぞれのメディアの中心で舵を取る現場のトップランナーは、メディアとアプリの関係性を今、どのように捉えているのでしょうか。
成長著しい各メディアで編集長やマネージャーを務めるキーパーソンに、メディア運営の実態や、メディアとアプリの未来について伺いました。

第1回は、株式会社Donutsが運営するライブ&動画コミュニティアプリ「MixChannel」事業責任者西村様(※以下敬称略)です。

株式会社Donuts
西村 洋平
MixChannel 事業責任者

MixChannelとは

Google Playより引用

「MixChannel」は、ライブ/動画を簡単に投稿することでコミュニケーションを楽しめるサービスとして、2013年12月よりアプリの運用を開始。提供開始からすでに1000万ユーザーを突破しています。これまでにツインズ(双子)ダンスやカップル動画などの投稿を通じて、多彩な若者文化や次世代のスターを生み出し、現在も「若者の流行の発信地」として脚光を浴びています。 (※公式ホームページより引用)

-本日はよろしくお願いします。まずはメディアの運営組織体制を教えてください。

西村:全体は5つのチームに分かれていましてマーケティングチーム、広告営業チーム、プロダクトマネジメントチーム、デザイナーチームおよびエンジニアチーム、という構成になっています。

-男女比率はどうなっていますか?

西村:マーケティングチームの比率は1対1です。その他のチームはほぼ男性です。

-もっと女性が多いイメージでした。

西村:性別は関係なくターゲットユーザー、MixChannelの場合はたまたま女性ですが、その気持ちになれるかどうかの方が重要だと思います。現在のMixChannelは女子中高生がメインユーザーとなっていますが、今後は、若者全体にサービスを広げていきたいと考えています。エンターテインメント性が高く、コミュニティとして成り立つ熱狂性があるジャンルを取り揃えているようなライブサービスにするためのチーム構成となっています。

「動画コミュニティサービス」というこだわり

-御社のメディアならではの運営ノウハウやこだわり、注意点などあれば教えてください。

西村:僕達は単なる動画投稿サイトではなく、コミュニティサービスとして成立させる点にこだわりました。
コンテンツクリエイターとそれを見る人(ファン)、その両者に関係性を作るということが1番大事と考えています。
配信者に対してカテゴリ=ステージを何個か用意しておいて、多彩なクリエイターが活躍できる場を提供してきました。この点がTwitterやFacebookなどのSNSと全く異なる点です。感覚的に言えば、SNSは自由にコンテンツをアップできる一方で、MixChannelは運営が半分ほどコンテンツをプロデュースしてあげるようなイメージです。

この思想の違いは、アプリ起動直後のUIの違いにも顕著に現れています。MixChannelは人気動画/ライブが表示されている一方、SNSは自分がフォローした人のコンテンツが出ている。この違いがコミュニティかそうでないかを大きく分ける一つの点かと思っています。

MixChannelのアプリキャプチャ画面(2017年11月時点のもの)
MixChannel独自のジャンルが用意されており、各ジャンルごとにランキングが用意されている。

例えばツインズ(※2人でペアになり、ペアルックなど似たような外見にしつつ、上半身を使ってペアのダンスすること)と言うカテゴリ=ステージを創ってあげる。そうすると、このジャンルが得意なユーザーはこの場でコンテンツを上げ始めるわけです。
暫く経つと、自分のファンが増えたり動画にライクがついたりして、とてもうれしくなる。したがって「このステージでより自分の地位を高めたい」「もっと自分のファンを増やしてコミュニケーションしたい」という欲求が湧き上がるわけです。
このような欲求を満たしてあげるために、プロダクトとしては、今このステージでこの地位にいるということをランキングで表現する機能を創ったり、ユーザーファン掲示板を創ってあげたりする。このようなサイクルを回す機能を作ることで、よりクオリティの高いコンテンツを自然発生的にユーザーから生まれてくるように設計したという点が最も大きなこだわりです。

一方向のプロセスではなく、サイクルを意識

上記のようなジャンルに対してPDCAを回してきてグロースしてきたのがMixChannelの歴史だと思っています。例えば新ジャンルのアイディアが10個あるとしたら、そのジャンルのクリエイターになりそうな方に声をかけてコンテンツを作っていただいて、プロモーションを回し視聴者を入れて、どのジャンルがコミュニティと相性が良さそうかをテストするというわけです。

プロモーションの中心はTwitterでした。Twitterはネットヘビーユーザーからライトユーザー、様々なコンテンツに関するコミュニケーションが、様々な熱狂度のレイヤーで実施されています。そのため、ジャンルテストにTwitterは最適であるなと感じていました。

-視聴者側のモチベーションはどう維持されていますか?

西村:自分が好きなコンテンツおよびそのクリエイターとのコミュニケーションが大半だと思っています。そのため、そのコミュニケーションが円滑に実施されるように、掲示板や、動画へのコメントといった機能に落とし込んでいます。

これまでの動画配信ではライクは1つの動画に対して1つしか送れませんでしたが、ライブ配信では、消費するコインの量=アイテムの量で愛を連続的に表現することを可能にしました。このように愛を表現して、「ありがとう」とクリエイターに言ってもらえるということ、つまるところ、視聴者の求める最高のコミュニケーションですが、これが視聴者側のモチベーションに繋がっていると思います。

コミュニティサービスの基本とは

-コミュニティサービスの基本構造についてご説明いただけますか?

西村:ジャンルごとに、コンテンツクリエイターとそのファンが作り上げる大きなピラミッド構造があり、それぞれのレイヤーごとにまた小さなピラミッド構造ができていると考えています。

西村様が書いた、V系を例にしたコミュニティサービスの基本構造の図

コミュニティ構造を考える上で、典型的な例としてビジュアル系バンドを考えてみましょう。これは様々なご意見があると思うのでピラミッドトップが誰かというところはありますが、これを言い始めると1時間では終わらないので(笑)、ここではわかりやすい例として、ビジュアル系バンドのピラミッドの頂点にYOSHIKIがいるとしましょう。その下に、YOSHIKIの地位を狙う、あるいは崇拝するクリエイター=ここではバンド/演奏者が存在します。
このようなクリエイターのピラミッド構造が大枠であり、その中のクリエイターは、それぞれファンを持っています。このファンも熱狂度に応じてピラミッド構造をしている。このような入れ子の関係でコミュニティは成り立っているものと考えています。MixChannelでは、クリエイター=配信者ですので、言葉を置き換えてまとめると、

1.配信者-配信者の関係
2.配信者-視聴者の関係
3.視聴者-視聴者の関係

それぞれにピラミッド構造があります。コミュニティサービスはこの3つの構造を強めるためにどのようなコミュニケーション設計をするのか、というのがキモとなると考えています。

– ライブ配信ならではのコミュニケーション方法の工夫などあるのでしょうか?

西村:様々あるのですが、わかりやすいところで言えばライブ配信中に飽きさせない工夫というところがあります。シナリオなどがなく実施するような、いわゆる素人さんのライブ配信は、テレビや映画などのように飽きさせない工夫を必ずしもできるわけではない、かつ、画角が1つに固定される場合が多いので、見ていて飽きることが多いのではないかと思っています。コンテンツ作りをサポートするなどの方法ももちろん重要なことではあるのですが、MixChannelの機能的な工夫としては、視聴者が愛を送るためのアニメーションを画面全体に及ぼすことにより、視聴者の目線を自然と動かすようにしています。

MixChannelでライブ配信をご覧いただければお分かりになると思いますが、視聴者のビューには、プレゼントボックスがちょこんとおいてあります。

これは、視聴者が「面白い!」または「わたしをみて!」と感じた際に使うアイテムが投げ入れられる箱の機能を果たしています。実際にアイテムを使うと、投げ入れるようなアニメーション=動きが表現され、その表現時に自然と視聴者はアイテムを目で追うことで目線が移動する仕組みになっています。ライブ視聴をしている際に、これは大きな刺激となって受け取られていると思っています。また配信者側からすると、アイテムを投げ入れてもらったこと=愛を受け取ったということで、配信の喜びとなっています。

上記のような工夫は、つまるところライブ配信のユーザー体験をより良くするのか、という哲学にもとづいています。そのため、MixChannelのアイテムは、コメントが目立つようなスーパーコメントが皮切りでした。その後、コメント内容を考えなくてもよいスタンプ、その後に応援アイテムと言う順番でリリースしました。

– MixChannelにしかないコンテンツはありますか?

西村:応援アイテムにはリッチなアニメーションを表現するコンテンツを用意しています。例えば、このシャンパンタワーは、全画面を10秒程度独占するようなものになっています。この実装は技術的に難易度が高くて苦労しました(笑)。

-アプリローンチの当初と比較してユーザーの使い方の変化がありましたか?

西村:プロダクトが変化したのでだいぶ変わりました。今後も動画は継続しますが、中心となる設計はライブ配信にシフトして行く予定です。

MixChannelがライブ配信に注力する理由とは?

-ライブ配信に転換されたきっかけは?

西村:コミュニティの熱狂度を上げていくためにライブ配信にしたという経緯があります。動画コミュニティを運営していく中で、視聴者の視聴動機が、コンテンツ中心からクリエイター中心に移ったという変化がありました。
例えば、ツインズ動画が見たい、カップルの動画が見たいと言う動機から、ツインズのこの人の動画がみたい、カップルのこの人の動画がみたい、と変化したということです。このような変化を受け、クリエイター=人に対してより集中的に熱狂度を上げるツールは動画が最適なのか、それはライブ=その時そのタイミングでしかないその人のコンテンツ、というツールの方が最適なのではないか、という考えにいたり、ライブ配信にかじを切ることにしました。

ライブ配信は、イベントなどの実体験には熱狂度が劣るし、動画コンテンツという意味でのクオリティ自体は、編集ができるという点でライブより動画のほうが高くなりますが、場所の制約なしに、スマホの画面の向こうで自分が好きな人が自分のためにコミュニケーションしてくれている、という1対1の疑似体験を作り、クリエイターに対しての熱狂度を上げるという意味でライブ配信は優れていると思います。

ライブ配信の今後

-国内のライブ配信に関しての未来はどのようになるとお考えですか?

西村:海外ではFacebook、Periscopeに収束しそうだというお話がありますが、日本は海外の流れとは違うと思っています。
今後はMixChannelのようなライブ配信に特化したサービスと、プラットフォームのサービスがどちらも併存するような形で競争していくと思います。

-動画をはじめとしたユーザー発信のコンテンツはここ数年すごく増えてきていると思いますが、これはさらに伸びていくのでしょうか?

西村:伸びていくと思います。MixChannel内で見ると、ユーザーにとって動画の投稿よりライブ配信のハードルの方が低いです。これは我々にも意外な事でした。「テキストを投稿する→画像投稿する→動画を投稿する」といった流れの中でだんだんと投稿のハードルが上がってきたように見えますが、実はライブ配信は投稿に対するハードルがガクッと下がっています。それは動画投稿と違い、編集という作業が入らないためです。そのため動画投稿よりはライブ配信の配信者のプラットフォームは広がると思っていますので、弊社もここ1、2年が勝負所だと思っています。

-本日は貴重なお話をありがとうございました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。これから加熱していくであろうライブ配信業界に対して今後MixChannelが更に盛り上げてくれることでしょう。またライブ/動画配信でのアプリの動向をApp Ape Labでは今後も注視していきます。