「メディア×アプリ〜現在地と未来〜 #2」株式会社nana music 文原 明臣代表

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メディアのアプリ化がここにきて急速に拡大しています。
既存のテレビや新聞、ラジオのアプリ展開に加え、新興の動画メディアからSNS、ウェブメディア、アプリメディア、さらにオウンドメディアまでアプリ化が加速しており、百花繚乱の様相です。

それぞれのメディアの中心で舵を取る現場のトップランナーは、メディアとアプリの関係性を今、どのように捉えているのでしょうか。
成長著しい各メディアで編集長やマネージャーを務めるキーパーソンに、メディア運営の実態や、メディアとアプリの未来について伺いました。

第2回は、音楽SNSアプリ「nana」を運営する株式会社nana music創業者兼代表取締役/CEO 文原 明臣様です。(※以下敬称略)

株式会社nana music
文原 明臣
創業者兼代表取締役/CEO

nanaとは

Google Playより引用

「nana」は、2017年10月に世界累計500万ダウンロードを達成した音楽投稿のプラットフォーム。ユーザー同士で拍手やコメントをつけたり、
重ね録りをしてコラボしたりと、音楽を介したコミュニケーションが行えます。機材やPCは必要なく、録音・加工・投稿の3ステップがスマートフォンひとつで行えることが特徴です。(※公式ホームページより引用)

-本日はよろしくお願いします。まずは御社メディアの運営組織体制を教えてください。

文原:開発、プロダクト(デザイン、グロースハック)、マーケティング(国内・海外)、QC(Quality Control サポート)といったチーム体制になっています。

-「nana」は海外展開にも力を入れていると聞きますが、どのような地域にサービス展開されているのでしょうか?

文原:今1番人気があるのはインドで、次いでタイ、台湾、USがユーザーとして多いです。インドは音楽やダンスなどエンターテイメント文化が盛り上がっていて、その影響もあり多くのユーザーに使われています。

-インドの方が歌われる歌は現地の歌でしょうか、それとも日本の歌なのでしょうか?

文原:現地の歌です。日本の歌が歌われるというケースはあまり多くなく、その国の曲を歌って投稿いただいているという状況です。

nanaの特徴は「コラボレーション機能」にあり

-御社のサービスならではのこだわりや、運営方法で気をつけている部分があれば教えてください。

文原:SNSサービスにおいて投稿のハードルが圧倒的に低いこと、投稿した場合に極力最短でリアクションが返ってくること、の2点が非常に重要だと考えていて、リアクションをもらえる仕組みとして「コラボレーション機能」は、最も特徴的な部分です。他のSNSの場合ですとコンテンツを見ていいねやシェアをして終了と言う流れになりますが、「nana」の場合は“コンテンツを引用して作る”ことで、引用された側のユーザーにも通知が行き、他のSNSには無い圧倒的なコミュニケーションが生まれます。

歌うユーザー側からすると、コラボすると言う感覚はあまり強くなく、カラオケをするような感覚に近いですが、実はその先にはそのオケ(伴奏)を作った制作者がいて、その制作者から「曲を使ってくれてありがとうございます。」と言ったコミュニケーションが生まれます。その体験はユーザーにとって単純な「いいね」のリアクションよりも強く印象付けるもので、ユーザーが「nana」を使う理由にもなっています。

-コラボレーションを誘発するための取り組みはありますか?

文原:ゴールデンタイムにプッシュ通知を送ることや、ユーザーそれぞれに合った楽曲をサジェストする仕組みを検討しています。現在注力している領域は、ビジネスモデル作りと、新規ユーザーによる「nana」への初投稿を増やす仕組みの強化です。一度投稿していただくことでユーザーの定着率が一気に上がるので、初投稿の壁をいかに低くするかというところが重要と考えています。

-新規ユーザーに初投稿させるための工夫を教えてください。

文原:現在そのための新機能を開発中で、ユーザーの好きなアーティストやジャンルなど、趣味嗜好を聞き出し、そこからキーワードで紐付いた人をサジェストしてあげる。といったような機能を検討中です。

また「nana」の場合は歌声や演奏、セリフといった“音声を録音する”という行動が必要なため、写真や動画と違って、投稿できるタイミングが限られています。ただし電車に乗っている時間等、空いている時間を使って「nana」に投稿された他のユーザーの録音を聴く事はできるので、このオケや曲にコラボしたいなと思った瞬間に、ブックマークできるような機能を持たせるなど、仮説のもとに機能開発をしています。

nanaのユーザーの特徴

-投稿するユーザーの属性はどのようになっていますか?

文原:今ユーザーの全体の比率で言うと8対2で女性が多く、歌を投稿する年代は10代の女性が特に多いです。今の10代女性はボカロ文化の影響もあり、歌うことが好きなのだと感じます。

-ちなみにオケ(伴奏)を制作する側のユーザー属性はどのようになっていますか?

文原:年代が高くなり男性比率も近くなる傾向があります。20代-30代の男性が中心となっています。

-2012年アプリローンチ当初のユーザーと2017年現在のユーザーの傾向の違いがあれば教えてください。

文原:そう大きな差は見られないのが現状です。歌われるジャンルはユーザーが一定層集まってきて以降、変わらずボーカロイドが多いです。ただ最近ですとセリフなどの「声」を投稿する人たちが増えてきたように感じます。日本はやはりアニメが人気なので、声で表現する声優志望の人たちが一定層いるのでしょう。

-やはり若者にはボーカロイドが人気になっているのですね。

文原:圧倒的に強いですね。ボーカロイドは10代にとっての音楽ジャンルとしてマスを占めてきていると感じます。
2007年8月に「初音ミク」が誕生して、ボカロ文化がニコニコ動画からはじまって、歌ってみた(人気の楽曲に自らの歌声を動画に収めて投稿したもの)や、カラオケ等を通じて様々な所で派生していった結果、今の10代にとって音楽ジャンルとして確立した流れがあります。今はニコニコ動画は見たことないけれど「歌ってみた」の有名な投稿者を知っている、といった10代も多いです。もはやボカロは文化になっています。

最近は文化が簡単にプラットホーム間を越えやすくなっているなと感じます。例えば「nana」の中で声で表現する人たちが始めた声面接(面接官が様々なキャラクターなどのお題を出しそれに沿って受験者は声のみで演技をする)、という「nana」発のコンテンツがありますが、この声面接を、他のSNSで見かけることがあります。この10年間で誰もが様々なプラットフォームに投稿するハードルが低くなったと感じます。プラットホーム独自の文化と言うものはこれからどんどん薄まっていって、簡単に伝播し拡がっていくことがこれからも起きていくと思います。

-そのような状況下で投稿されるプラットフォームとしてユーザーから「nana」が選ばれている理由はどこにあるのでしょうか?

文原:大きな理由はやはりコラボレーション機能にあると思っています。他人と協力して重ね録りをする機能は他にはあまり無く、ユーザーにとって大きな体験になっているようです。付け加えて、動画や写真だと女の子であればお化粧したり、見え方・画角も気をつけたい人も多いでしょうから、音声はその点で投稿のハードルが低い面もあります。「nana」は動画配信サービスと共存していて、「nana」を使っているユーザーは、LINE LIVEやツイキャス、YouTube等を使っていることが多いです。我々としても「nana」とは何なのかというところを今後も明確にしていく事がすごく大切だと思っています。

nanaとスマートフォンアプリの関係性

-「nana」とスマートフォンアプリの関係性を教えてください。

文原:「nana」はウィ・アー・ザ・ワールドのように世界中を音楽で繋げたい、という思いからスタートしています。今この瞬間に世界中の人と音楽がやりたい、これは物理的に不可能じゃないですか。音を認識するデバイスも必要ですし、その音源をネットワークにあげなくてはいけない。それを解決するための答えがスマートフォンにあると思いました。我々の理想を実現するために現状では最適なツールとしてスマートフォンアプリを採用しています。

-「nana」の今後の展望を教えてください。

文原:ハード面のモバイルシフトは進化している一方で、ユーザの行動や体験を円滑にしていくためのモバイルシフトはまだまだ可能性があると思っています。人間は、たった1人で良いから自分を認めてくれる人がいれば意外と救われるじゃないですか。「nana」で音楽を投稿することで、そのような人を見つけて、支えてあげられるようなサービスにしたいです。

そして「nana」は単なるカラオケアプリにしたくはないと考えています。もちろんカラオケ自体は音楽の敷居を下げて誰しもが歌って、楽しむことのできる素晴らしいものですが、双方向のコミュケーションが生まれる「nana」のコラボレーションだからこそやれることがあると思っています。また「nana」では歌手とオーディエンスの関係性を対等にしたいと思っています。いわゆる文化祭やコミックマーケットのような作り手と受け手の垣根が無いイメージですね。弊社で開催するリアルイベントも今後はよりそういった形を実現する場にしていきます。

-本日は貴重なお話をありがとうございました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。世界中のユーザーが一緒に音楽を作り、奏でる未来を「nana」が作り出すのはそう遠くないように感じます。コラボレーションをキーワードに世界的にサービスを拡大する「nana」の今後の動向をApp Ape Lab編集部ではウォッチし続けます。

同シリーズは以下からご覧ください。

「メディア×アプリ〜現在地と未来〜」MixChannel事業責任者 西村 洋平氏