日本のガチャシステムは古い!?海外ゲームアプリに学ぶマネタイズ Unity道場で岩崎氏が提起

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マルチプラットフォーム向け統合開発環境「Unity」を提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社は11月22日、公式セミナー「Unity道場」を東京都内で開きました。「課金ノウハウとアプリ市場を基礎から学びなおす」をテーマに、グローバルな市場で生き残るために重要な課金ノウハウやアプリ市場についての理解を深めました。

中でもI Got Games Inc.でLead Game Designerを務める岩崎啓眞氏による「日本のガチャサイクルとそれを学んだ海外課金」と題した講演は、ゲームアプリが今後目指すべき姿の一つを提起し、受講者の関心を大いに集めました。

今回は岩崎氏の講演を再構成してお届けします。

少々長めの記事ですが、非常に刺激的な内容ですのでぜひ最後までお楽しみください。

I Got Games Inc.
岩崎 啓眞 氏
Lead Game Designer

岩崎氏は80年代後半から仕事をしてきたゲームデザイナー。2010年ごろから海外、国内双方のスマートフォンゲームに関わってきました。

講演で岩崎氏は国内と海外のスマートフォンゲームの課金構造や思想の違いを説明。グローバル市場で戦う際に必要な要件などについて語りました。

目次

なぜ日本のゲームは国内で成功したのか?

一般的なRPGのゲームサイクルというのは①バトル②成長リソースを獲得③キャラクターの強化(レベルアップ)ーーのサイクルを回し続けることにあります。これは40年前の初代Appleの「Wizardry」の時から変わらないゲームのメカニクス(力学)です。

[岩崎氏の講演資料より引用]

一方、日本のモバイルゲームの場合、このRPGのゲームサイクルに「ガチャサイクル」を組み合わせることによって強力な課金構造を形成してきました。ガチャサイクルはGREEの超名作「ドラゴンコレクション(DRAGON COLLECTION)」で完成の形を見ます。

ガチャサイクルは①ガチャを引く②いらないキャラ(カード)を合成する③キャラクターの強化(レベルアップ)ーーのサイクルを繰り返します。

[岩崎氏の講演資料より引用]

ガチャサイクルと普通のゲームサイクルは重なる部分があります。それは「キャラ強化(レベルアップ)」の部分です。通常のゲームサイクルと並行してガチャサイクルも回すことで、驚異的な売上を叩き出してきたのです。

例えば2011年12月、ドラゴンコレクションは売上強化月間のイベントにガチャを組み合わせ、1ヶ月で2~4回の施策を実施しました。国内で驚異的な売上を記録して海外勢の注目を浴びたのです。

さて、2011年12月というと、当時の海外ゲームの主力ジャンルはVille系ゲームの延長線上にある「City Builder」(現在もあります)。当時の課金率は1カ月あたり3、4%、ARPPUは月2ドル程度と低いのが実情でした。

そこで、海外勢のGemeLoftはGREEとの協業プロジェクトとして、「プロジェクトLOTTERY」を2011年から12年にかけて実施しました。端的に言うと、全ゲームにガチャを入れる試みです。しかし、全然うまくいきませんでした。

なぜ日本のガチャサイクルは海外でうまくいかないのか?

なぜ日本のガチャサイクルは海外ではうまくいかなかったのでしょうか?

実は、ガチャサイクルが成功するためには2つの前提要件があります。

一つは大量のデータをサーバーからゲームのたびにダウンロードできることです。パケット通信を大量に使う上、通信速度が求められます。

もう一つが、大量のデータをハードウエア上に置けることで、スマホなどの端末そのものに容量が確保されていることです。

では、海外の当時のパケットコスト、つまり通信料金というのはどういう事情だったのでしょうか。

[岩崎氏の講演資料より引用]

2014年のニュージーランドのデータを参照してみてみると、月額料金9000円で通話無料ですか、データ通信の上限は1.5ギガ、上限を超えると通信ができません。超過した際の追加パケット料金は日本の1.5倍の2ギガ3600円です。感覚的には、日本の通信コストの2、3倍なのが海外の実情なのです。

お世辞にもリッチとは言えない通信環境に加え、さらに足かせとなるのがスマホなど端末の機種の「ばらつき」です。

2017年に私がある会社の調査を受けて実施したあるゲーム関係の解析データによると、2017年時点で2012〜14年の端末がなんと4割もあるのです。この傾向は特にAndroidで顕著です。

この状態では、日本のように最新の高速大容量の通信によるリッチなゲームは厳しく、これらの端末で現役でゲームができるようにするのは至難の技です。

なぜ日本のゲームは国内で成功したのか?

このように通信環境、ハードウエアの厳しい制約があったのにもかかわらず、海外ゲームがなぜ成立したのか。これには理由があります。

海外はダウンロードやDAUの数字が桁違いに大きいのです。

2012年に私がある海外ゲームの事業計画を書いた際、目標とする初期ダウンロード数は200万でした。

現在は全世界ダウンロード6000万、DAU1億というゲームも実際にあります。これだけの圧倒的な母数があれば、通信や端末など環境の厳しさというのはあまり関係ありません。

ちなみに、DAUが桁違いに大きい海外ゲームで必須のKPI、KGIとして出てくるのがDAU-RETENTION(DAU継続率、DAUR)です。日本ではまだ馴染みが薄い指標だと思います。例えば、DAUが100人から翌日に95人になった場合、DAURは95%と表現します。

[岩崎氏の講演資料より引用]

このDAURをゲームに採用するメリットは大きく分けて二つあります。

一つは、DAURならば毎日5%分など一定のユーザーを補充すればDAUが減らずに安定するということがわかります。とてもシンプルで扱いやすい指標ということです。

もう一つは、DAURが会社の目標とする数値よりも大きく、なおかつCPI(Cost Per Install)がLTV(Life Time Value)×DAURの係数よりも小さければ収益化が可能なので、広告投入、つまり流入増加をする、小さければしないといったように、判断基準として明快である点です。

日本の継続率よりも合理的で扱いやすいので、非常にオススメなKPIなのです。

[岩崎氏の講演を元に App Ape Lab編集部作成]

このように、日本のゲームが猛烈に売上を出せた理由は、ガチャサイクルという独自のしくみにイベントを組み合わせたからでした。

一方、海外に進出できなかった理由は、ガチャサイクルが成立する前提として、大量のデータ通信と大記憶の容量のデバイスが必要ですが、海外は通信費や通信環境、機種のばらつきが大きく、日本のガチャサイクルを前提としたゲームとの相性が悪いからです。

「まずは国内で成功してから」という思考を捨てるべき」

その上で、もし海外でゲームを売ろうとするならば、「まずは国内で成功してから」という思考を捨てるべきです。

海外でも通用する超有名なIPを持っているのでなければ、「まず国内から」というのはやらない方が賢明です。

国内で成功するということは、ガチャで大量にものを売る方式に他なりません。ガチャサイクルが機能する環境が整っていない海外ではほぼ機能しないことが証明されているからです。

現状、日本で成功してから海外に打って出るというのは日本のガチャサイクルが機能することが前提にあります。ガチャサイクルがそのままでは通用しない海外では「自動敗北」に近いのです。

「日本のゲーム運営には毎月1億円が必要」

日本のゲームの売上構成比が変化した問題はぜひ語らなければならないと思います。

国内ゲームでは、2014年当時は、イベント時でもガチャの売上は60%程度で、70%を超えると不健全な状態と言われていました。

しかし、2016年にはイベント時のガチャ売上構成比が70〜80%となるのは普通になりました。

なぜガチャの売上構成比が上がったのでしょうか?

例えば、ガチャサイクルを確立させた「ドラゴンコレクション」の場合、一概には言えないものの、最短で1分間で数百円から数千円の課金を消費できました。

一方、最近のアプリの例で言うと、コナミの傑作「実況パワプロ」は1試合1〜3分程度で、5試合で120円。つまり、10〜15分で120円の課金となります。ゲームサイクルが長くなったのです。

ここでちょっと売上を維持するための国内ゲームの運営コストについて考えてみましょう。

[岩崎氏の講演資料より引用]

月2回のイベントを実行すると仮定して、ゲームの運営は何人必要でしょうか。実はガラケーソーシャル時代に比べ、運営チームも巨大化しています。最低ラインは30人程度で、運営チームが3000〜4000万円を毎月消費します。開発チームが別建だと、さらにコストは跳ね上がります。

さらにストアを有するAppleとGoogleが売上の30%を持っていくことから、毎月4300万円くらいの売上でようやく収支が均衡する形です。まだ開発費は1円も回収できません。

ここに開発費を1年間で回収することを想定すると、開発費5億円を12ヶ月で割って、4200万円が追加される形になります。

運営と開発で合計7200万円。つまり、売上が毎月1億円くらい計上できないと勝負にならない状況なのです。

「海外の運営チームは小さく低コスト」

では、海外の運営体制はどうなっているでしょうか。

最近、「アズールレーン」の運営が非常に少人数で驚きを持って報じられた記事がありましたが、実は海外ゲームの事情を知っていれば全く驚くに当たらず「当たり前だろ」ということになるのです。

例えば、マッチ3ゲームの運営は全部で5人程度、開発チームを含めても10人以下です。そこに世界の各地域ごとに2、3人が加わる形になります。

RPGでも大きくは変わりません。運営はビジネスまで含めても10人以下。ワンバイナリではそれぞれのリージョンに数人です。運営チームは小さく、PCの大規模多人数型オンライン(MMO、Massively Multiplayer Online)などのイメージに近いかもしれません。

国内ゲームは運営コストが大きいため、失敗すると即撤退ということになります。一方、海外の場合、運営コストは低く、仮に売れなくても開発がストップするだけです。その後、サーバーのコストは低いため、放置しておくことになり、完全広告型のゲームとして移行し、MMOは停止します。

「すでに海外ゲームが国内で売上上位にきている」

ここまで話すと、だいたい「でも当たった時に儲かるのは日本型のガチャシステムでしょ?」という声が聞こえてきます。しかし、実際そうなのでしょうか。

ここで、日本のゲームの売上ランキングを見てみると、海外ゲームをカルチャライズされたものもあるため、時期や数え方にもよるものの、ベスト50以内に海外ゲームが5〜10本入っているのは当たり前の世界が広がっています。つまり、海外ゲームのほうが効率の良い収益化が可能となっているのです。

海外の課金でこれまで問題だったのは、課金率の低さで、5%行けば奇跡と言われていました。しかも、課金率は年々下がり続けており、ARPUが上がらないということになります。だからこそ、日本のガチャサイクルに憧れたのでした。

そこで、海外ゲームはガチャから学び課金の改善をしました。

「海外型のガチャ許容ゲームサイクル」

[岩崎氏の講演資料より引用]

まず、ドロップからの「合成」のパスを作ることで、ガチャのメリットをゲームに導入しました。

そして、ゲームのサブサイクルとしてカードパック方式やブースターパック方式のような形で「海外型ガチャ許容サイクル」を導入することに成功しました。

海外型ガチャ許容ゲームサイクルとは、「合成」というもう一つの発明と組み合わせ、通常のステージでキャラクター(主要育成リソース)をドロップするようにしたものです。

通常のゲームサイクルでキャラクターを落とすことで、誰でも同じものを手に入れるチャンスが生まれます。相対的にガチャの価値は下がりましたが、値段を下げて詰め合わせ販売することで解決しました。ガチャが安いので、新規追加で売上を追求しなくても良くなります。

さらに、通常のゲームサイクルでドロップすることで、スタミナや燃料といった形で課金が機能するということになります。

中国や韓国のゲームでは、ゲームのスピードを上げるため、オートやスピードアップ、スキップを入れるのが一般的です。倍速解放から始まり、オート解放、さらにはスキップという具合に課金が機能するスピードが早くなっていくのです。

「サンクコスト課金」

[岩崎氏の講演資料より引用]

これに加えて、時短やコンティニュー課金の改善として、「サンクコスト課金」と呼ぶべきものが、海外ゲームには組み込まれています。

「サンクコスト課金は」私が造った言葉です。一言で言うと、同じアイテムでも課金をするたびに値段が上がるということです。

この仕組みを初めて見たのは3マッチゲームでした。

中国人の同僚によると、2015年ごろからGvG(Guild vs Guild)などで導入がありました。「リネージュ2」では、GvG時の生き返りで課金がありました。

「アズールレーン」では燃料にサンクコスト課金が導入されています。時短やコンティニューで収益を出すための決定的な武器となりうるものです。

海外型のガチャシステム導入で日本のゲームにも勝機がある

日本ガチャサイクルは、ゲームサイクル側の課金が安くなりすぎた上、ガチャに依存しすぎる売上構成比となっており、バランスが悪くなっているのが実情です。

一方で、海外の「ガチャ付きサイクル」は、日本の合成やガチャの要素をうまく導入し、スタミナ、時間、コンティニュー課金、スキンなどに分散することで収益を確保できるようになりました。

この海外で考案された課金技法は、若干の調整やアレンジで日本で使うことができます。実際、「リネージュ2」や「アズールレーン」が証明しています。

みなさん、そろそろコストがかかり、レッドオーシャン化した厳しいガチャサイクルを修正し、海外型のガチャサイクルにしませんか?この形なら海外進出もできますよ。

【UPDATE!】
岩崎氏が講演当日のスライドをSlide Shareで公開しました。
1月3日配信・海外ゲームの海外型課金モデルはどうして成功しているのか?「ガチャサイクルと海外課金」ゲームデザイナー岩崎氏がSlide Shareで公開

App Apeの詳しい紹介はこちら!