読者との接点増やしアイドルタイム解消へ、BtoBメディアがアプリに挑戦 「可処分時間の奪い合いはアプリだけじゃない」ferret創刊編集長 飯髙悠太氏

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メディアのアプリ化がここにきて急速に拡大しています。

既存のテレビや新聞、ラジオのアプリ展開に加え、新興の動画メディアからSNS、Webメディア、アプリメディア、さらにオウンドメディアまでアプリ化が加速しており、百花繚乱の様相です。

それぞれのメディアの中心で舵を取る現場のトップランナーは、メディアとアプリの関係性を今、どのように捉えているのでしょうか。

成長著しい各メディアで編集長やマネージャーを務めるキーパーソンに、メディア運営の実態や、メディアとアプリの未来について伺うシリーズ 「メディア×アプリ」。

今回は株式会社ベーシック 執行役員ferret 創刊編集長の飯髙悠太氏に国内屈指の会員数を誇るWebマーケティング総合メディアferretとアプリの関係などについてお話を伺いました。(以下、敬称略)

ferretとは?

[ferretトップページより]

Webマーケティングで悩むユーザーの問題を解決するのが「ferret」。2014年8月まではWeb担当者向けにツールを提供していましたが、2014年9月にWebマーケティング関連の情報を発信するメディアに生まれ変わりました。

Webマーケティングに関係する情報を、分かりやすく噛み砕いて解説。ferretだけでマーケティングに必要な情報を得ることができるのが強みです。

これまで認知、集客、効果測定、など手段を軸にマーケティングを学ぶことはできましたが、入口から出口までを伝えるメディアが存在していないことに着目。マーケティングに関する満点の知識よりも、平均点以上の知識を身につけられることを重視した構成となっています。

さらに、コンテンツマーケティングなど20種類以上のカリキュラムから好きなものを選んで読むだけで、一定以上の知識を習得可能。最近ではWebマーケティングの最前線で活躍するWebマーケターや経営トップ層への独占インタビューなども公開しています。

接点増やしアイドルタイム解消へ、BtoBメディアとしての挑戦も

ferret
飯高 悠太 氏
株式会社ベーシック 執行役員ferret 創刊編集長

ーー今回アプリを導入するに至ったのはなぜですか?

飯髙: 最も大きなきっかけはインターネットデバイスの変化への対応です。

総務省が公表している2017年の情報通信白書によると、端末別の インターネット利用状況は、PCが58.6%と最も高いものの、スマートフォンが前年比3.6ポイント増の57.9%、タブレットが同5.3ポイント増の23.6%と急速にシェアが拡大しています。(出典:総務省・平成29年版情報通信白書282ページ)

BtoBのメディアであるferretは、ユーザー利用の7割がパソコンとはいえ、やはりスマホシフトが年々進んでいるのが現状です。

ユーザーの可処分時間の中でタッチポイント(接点)を増やすため、メディアとしてアプリを持っておこうというのが大きな狙いです。

アイドルタイムの解消もまた大きな狙いです。BtoBメディアという特質上、 ferretは会社の営業時間内に見るユーザーが多く、午前9時から午後5時までが最も記事が読まれるコアタイムでなんです。逆に、朝と夜の時間帯がアイドルタイムになります。

そこで登場するのがアプリです。朝晩の通勤など「すきま時間」にferretアプリを利用してもらうことで、アイドルタイムをカバーできるのではと考えました。

[Google Playより]

実際、ローンチしたferretアプリのセッションのピークは午前8時台や午後8時台で、当初の狙いは当たっていると感じています。

もう一つ、チャレンジングな視点でいうと、「BtoCメディアのアプリ」は数多く成功しているけれども、そもそも世の中にほとんど存在しない「BtoBメディアのアプリ」をあえて出したら、ユーザーはどんな風に反応するのか、メディアとして成功できるのか、単純に知りたいという側面もあります。

テーマは「Webマーケティングの大衆化」

ーー現在の運営体制はどのようになっておりますか。

飯髙: ferretを運営するメンバーは「メディアチーム」と呼ばれています。編集が3人、セールスが2人、マーケティングが3人、エンジニア4人、あとは僕です。ferretでは毎日10本程度の記事を公開していますが、主に書いているのは編集で、基本的にほぼ内製です。

外部の執筆者も40人以上います。外部の企業と連携し、お互いの強みを生かしながら出稿していただいています。例えば、SNSの運用会社さんと組むことで、ferretだけではできない中身が濃いコンテンツを協力して作ったりしています。

ferretという媒体に記事を書くことによって、執筆者や企業の認知度向上とともに、それぞれの事業のコンバージョンにもつながることをメリットとして提供させていただいています。

ーーferretのテーマは何ですか。

飯髙: 僕らの1番のテーマは、Webマーケティングの大衆化です。これをなし得ることがメディアのゴールです。だから、難しい情報を提供するつもりは一切ありません。

僕らは中小企業のマーケティングをもっと良くしていきたいと思っています。ウェブで事業を展開する時の戦略策定や競合調査、サイト構築、集客、エントリーフォームの最適化などを一気通貫で分かりやすく伝えたいというのが思いなんです。

一方で、ferretはオウンドメディアとしての機能も持っています。自社が提供する「ferret One」というオールインワンのマーケティングプラットフォーム、そして4月にリリースしたマーケティングに必要なツールとユーザーのマッチングサイト「Marketer’s STORE」への正しい送客という重要な役割が ferretにはあります。

[マーケティングツールとユーザーのマッチングサイト「Marketer’s STORE」]

ーーメディアの運営でKPI(重要業績評価指標)はどのように設定していますか?

飯髙: 新規ユーザー数を大きなKPIとしています。しばらくメディアを運営していると、オーガニック検索からの流入が増えてきて「伸びている風」になってくるんです。でも、各チャネルからの新規ユーザーの増加は、PVだけではなく、その後のリテンションやファン獲得、自社ツールへ正しい送客などの成長に直接結びつきます。だから、新規ユーザー獲得にはどういう企画や施策を打ち出せば良いのだろうかと、常に考えています。

打席には多く立つ、スモールでもまずは回してみる

ーー企画はどのように練っているのですか。

飯髙: 週一回、チームで打ち合わせをして持ち寄ります。「ちょっとこれやってみたい」といった感じで、僕のトップダウンで企画が始まることもあります。もし数字になって継続性があるんだったらそのままやり続けるといった具合です。

ーー「まずはやってみる」と言うことが多いのですか。

飯髙: これは僕の性格かもしれませんね。自分でやってみて「ああ、こうなんだ」と初めて気づくこともありますが、逆に他社が成功してるからといって、こちらが絶対に成功すると言う保証もありません。

そうであれば 打席に立つ数を増やさないと成功ポイントは増えないと思うので、なるべくスモールでもまずは回してみて、その成果を体験できるのだったら、体系化していこうといった思考です。

ーーメディアの運営で気をつけていることや、こだわっている点はありますか?

飯髙: 何かに偏ってしまうことによってユーザーを不安にさせたり、わからないことが出てしまうことが無いようにするため、コンテンツに関しては中立公平であるよう注意しています。あとは、やっぱり中小企業に寄り添ったWebマーケティングメディアとして、なるべく噛み砕いてコンテンツを伝えることも意識しています。

ただ、これがマーケティングの専門家からすると「解釈や解説が浅い」と炎上のポイントになってしまうことは時々あります。それでも、これは100人いる全員が納得することは無理ですし、僕らはやっぱりSMB(中堅・中小企業)に対して記事を発信しているので、そこは徹底してこだわっています。

アプリの新規インストールは新規会員獲得と同じ

[Webマーケティングを体系的に学べるカリキュラムを揃える。会員数は36万5000人を突破した(ferretサイトより)]

ーーferretがアプリを出すメリットはどんなところにあるとお考えですか。

飯髙: 実は、ferretはおかげさまで会員数365,000人(2017年12月現在)を超えました。ウェブの新規会員登録が毎月2,000人くらい増えているんです。このウェブの新規ユーザー獲得と、アプリのインストールユーザー獲得を僕はほぼ同義だと思っています。

だって、アプリをわざわざインストールするというのは、新規会員登録と同様にかなりのハードルじゃないですか。だから、メディアの新規ユーザーを伸ばすという意味で、アプリはとても良いしくみだし、重要だと思っています。

これまでのチャネルであるウェブのブラウザ、メルマガ、SNSに加え、アプリを使うことでユーザーは良い記事によりストレスフリーに入ることができるし、ferretはスムーズな新規ユーザーの獲得につながります。

あとはやっぱり、ファンの創出というのがあると思います。新聞や雑誌などの強いメディアは広く浅い情報を多く持っている一方、ferretは狭い領域で深い情報を持つメディアです。

僕は狭くて深いメディアと言うのはこれからの時代、本当に勝てると僕は思うんです。

数年後に情報の99%は届かなくなるというデータもありますが、そこで勝ち切るためにも、まずはファンが必要になるのです。

もっと言ってしまうと、時代がコミュニティー形成になって来た時、そのコミュニティーを作るのもアプリがきっかけになるのではないかと考えています。

ーーメディアにとって、アプリはどういった活用ができるとお考えですか。

飯髙: ユーザーがアクセスすることが習慣化されるのが大きなポイントだと思います。スマホアプリとしてユーザーのそばに常にメディアがいて、何かあったらすぐに入れる状態というのは、アクセスの強い動機付けになるのではと考えています。

もう一つは、ブラウザを開く必要がないので、コンテンツが本当に良ければ、ユーザーが訪れてくれるのではないかとも考えています。さらにアプリはプッシュ通知のようなプル型のセッションが取れるので、その辺は大きいかなと思います。

あとは例えば、お気に入りや履歴の管理、自分が見た記事の分かりやすいストック、Webサイトと連動したお気に入り機能とか、アプリ限定のコンテンツとか、いろいろな可能性が広がっていると感じています。

ーーユーザーからはどんな反応が届いていますか?

飯髙: SNSを見ているとferretのことを好きになってくれているユーザーが「ダウンロードしましたよ」と反応してくれたり、「これうれしい、まじで待っていた」とか、そういう声は複数見られますね。ああいう声はとても嬉しいですね。

僕もSNSでシェアしたりすると、知り合いからメッセージが来て、待ってたよとか、後はバグを教えてくれたりとか(笑)。

ただBtoBなのでハマるかどうかはまだまだ未知数です。僕自身もメディアとしてアプリをやったことがないので、チャレンジングなところですね。でも、これでめちゃめちゃ伸びたら嬉しいじゃないですか?誰にも見られなかった世界を作ったとい言うきっかけになると思います。

ーーBtoBメディアのアプリって世の中にほとんど無いですよね。

飯髙: そうなんです。でも、移動中の時間も仕事をしなきゃいけなかったりとか中小企業はそういうところがあったりしますし、経営者やマーケティングやトップ営業が見ていたりするので、そういった時間は有効に埋められるのかなと思っています。

ーーアプリでの学習カリキュラムがferretならではの価値だと個人的に思っております。

飯髙: その通りです。移動時間でぱっと読めるとか、時間を無駄にしたくないとか、そこを突き詰めると、さっきの話じゃないですけれど、コミュニティーとか、いかにコアなユーザーさんに対して良いものを提供できるかと言うことが重要になります。なので、究極を言ってしまえば、めちゃめちゃインストールが伸びるというよりも、どちらかと言うと、今のコアなユーザーさんに使ってもらうことが1番で、隙間時間を埋められたとか役立ったとか価値を感じてもらうことが特に重要だと思います。

だから、他のアプリだと1ヵ月の売上トップになるとかいろいろあるかもしれませんが、ferretの場合はDAUがどれくらい伸びるかとか、いかにユーザーに使ってもらえているかがポイントになります。

プラットフォームの変化にいち早く対応へ

ーーアプリとメディアの関係はこれからどうなっていくと見ていますか?

飯髙: 今も実際にそうなっていますけれども、クロスメディアな状況の中で、これからアプリの重要性はますます上がっていくんじゃないかなとは思っています。その中でも、適切なタイミングで、適切なチャネルに、適切なコンテンツを提供するニーズの高まりに対して、アプリのプッシュ通知の活用や、今この瞬間に見るべきコンテンツが正しい発信、細やかなコミニケーション設計などをいかに講じていくかが重要なポイントになると思います。

もっと広い視点で見ると、プラットフォームというのはものすごく変化するじゃないですか。Googleが中心にいた時にFacebookが生まれるなんて誰も思っていなかった。だからこそ、変化に対しては常に対応するべきだと思っているんです。

もちろん、僕らも新しいプラットフォームが登場した時にはなるべく早く対応して、どんなものでどういう特性があるのかを理解し続けていきたいです。

最初から否定するのではなく、常に可能性を感じていたい方とは思います。

僕、新しいことが大好きなんです。いろんなサービスが出たらとりあえず使ってみようという人間です。これなんか微妙だなというサービスも、使ってみないとわからないですよね。使ってみたらめちゃめちゃ便利だったと言うことがあると思うので、来るものは拒まず食べていこうというスタンスです。

また、これからはアプリだからとかじゃなく、やっぱり可処分時間の奪い合いであって、同業じゃなくてもアプリを出していれば、その時間の奪い合いって考えていった方がいいなって思っています。