「データの面白さと価値に気づいてもらいたい」フラーCEO・渋谷修太が明かすUSデータ無料開放の裏側

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スマホアプリ分析プラットフォーム「App Ape」を提供するフラーは、米国アプリユーザーデータの無料開放に踏み切りました(当時、現在は終了)。なぜ、フラーは貴重なビジネスリソースであるアプリデータの無料開放に踏み切ったのでしょうか?同社代表取締役CEOの渋谷修太が裏側を語りました。(敬称略、聞き手はApp Ape Lab編集長・日影耕造)

飲み会のネタには絶対困らない


ーーUSデータ、めちゃめちゃ面白いですね!面白すぎて夜眠れないんですけれども(笑)。

渋谷:やっぱりそうですよね(笑)

ーー日本とトレンドが同じだったり、全く違うアプリがあったりして非常に興味深いです。あとは、何といっても母数が大きいですね。圧倒されます。アメリカはアプリシフトの先行国であることをはっきりと捉えることができます。

渋谷:そうそう!人口規模に対する利用率も高いし、この規模感を感じるだけでも、海外展開への意識やグローバルに市場を捉える意味を考えさせられますね。

例えば、Netflixのランキングの順位は日本に比べて圧倒的に高いですし、グローバルに展開するアプリを見ることで、日本で同じことが起きているのかどうかなどといったトレンドの先が見えてきます。

「SpotifyとNetflix、アメリカではどっちがユーザーが多いか?」みたいなクイズが作れたり、USデータ無料開放の間は飲み会のネタには絶対困らないと思いますよ(笑)。

しかも、USデータの開放とほぼ同時に、スマホやタブレットなどへのモバイル対応もリリースしたので、これからは飲み会の最中でも、布団の中でもデータが見られちゃいます(笑)。App Apeのモバイル対応は個人的に泣くほど嬉しいですね。

参考:4月17日フラー株式会社ニュースリリース・App Ape、スマートフォンやタブレットなどモバイルに対応

日本企業がアプリでグローバル展開するのを支援したい

ーーそんな貴重なUSデータを、なぜ無料で全部開放したのですか?

渋谷:一つの大きなきっかけは、今年の2月に開いた、2017年のアプリの中で最も利用伸びた頂点のアプリを決める「App Ape Award 2017」です。

メルカリの小泉さんやテンセントのシンさん、delyの堀江さんと一緒に参加したセッションのテーマが「Go Global」で、日本のアプリを世界へという話が出たんですね。

セッションの最中、メルカリさんとかスマートニュースさんとか頑張っている事業者さんがいる一方で、日本のアプリ企業のほとんどが日本国内でビジネスをしている現状を感じました。

車や家電業界では、世界中で日本製品が売れているわけであって、アプリだってプラットフォーム的には勝負できるんじゃないかと思うんです。なのに、このまま日本のアプリ業界が日本で閉じていていいのかという疑問が浮かび上がってきて、日本企業がアプリでグローバル展開するのを支援したいという思いに変わっていきました。

ーー今年2月のApp Ape Awardの最中に決断をしたと。

渋谷:そうです。セッションの中で、クラシルの堀江さんやメルカリの小泉さんに勇気をもらって、決意が固まりました。日本のIT企業ってアメリカで孤軍奮闘だと思うんですよ。それをもっとみんなで盛り上がったほうがいいねと思って、その中で自分たちに何ができるかを考えた末の決断でした。

決断してから、フラーの社員が本当にすごい速さで動いてくれたので、本当に感謝しています。そして、公開途中の今の時点でも、すごくデータに興味を持ってくれている人がたくさんいるのを感じています。やってよかったなあと思います。

データホルダー側が市場をリードしていくという発想

[App Apeの実際の画面]

ーービジネス的な狙いというのはあるのでしょうか?

渋谷:そうですね、ビジネスの視点で見ると、App Apeをこれまで展開してきた中での反省点を踏まえた、無料開放という位置付けです。

僕らのサービスはいわゆるBtoBのアプリ事業者向けの支援ツールです。サービスを提供する時点で基本的には既に市場ができつつあって、その市場に連動して競合分析や戦略策定のデータをツールで提供し、支援していくモデルなんです。

毎年、アプリビジネスには大体3つほどトレンドがあります。例えば、ある年はニュース・漫画・ショッピング、翌年はメディア・本格RPGゲーム・仮想通貨といった風に、その年のトレンドができるたびに市場を形成し、競争関係が生まれます。すると、マーケットの中で施策や経営戦略で判断をするために重要なデータの価値が高まっていきます。

アプリのデータは、市場ができ上がってから価値が生まれるんです。

アプリの新しい市場ができ上がった時に、その市場をサポートするために売りに行くという「市場の後追い」または「市場についていく」というビジネス展開をApp Apeはしてきました。

それがすごく反省点だなと思っているんです。

その仮説でいくと、僕らがアメリカのデータが今、手元にあってお見せできるのに、日本の企業がアメリカのデータに興味を持って市場が形成されてからでないと、ビジネスが始まりません。

でも、データホルダーの役割ってそうじゃないんです。データホルダー側が市場をリードしていくという発想にならないとダメなんです。

自分たちのデータをまずは見てもらって、興味を持ってもらって、結果としてApp Apeを使ってもらう。そういう風にスキームを変えて、自分たちが価値提供をできていなくてはダメなのではないかなあと思って。

だから、自分たちがデータをオープンにしていくことで、「アメリカのアプリ市場って面白いね」とデータを見た事業者さんに興味を持ってもらって、事業者さんが「じゃあ、海外展開やっていこう」と意思決定するきっかけを作りたいんです。

そういった反省があって、まずはデータを全て無料で出すことになりました。

ーーそんな想いがあったんですね…。

渋谷:実は、日本で現在のApp Apeをリリースした際にも、データを無料で一定期間出したんです。そうすることで「アプリのデータ面白いね」と、皆さんが価値に気がついてくれました。しかし、いつしか僕らも頭がこり固まってきて、「次はこの市場で」みたいな感じで、次の市場を追いかけていたことに気がつきました。

そこを今一度立ち戻って、自分たちからデータを出していって、アメリカのデータは面白いということを積極的に発信していこうという決意をしました。

使ってもらう人が多ければ、データの面白さや利用価値に対する気づきが多くなる

ーーどうして「無料開放」なのですか?

渋谷:究極の話をすると、アメリカのデータの何が面白いのかというのは、僕らですらも完全に分かり切っていない部分があると思っています。でも、使ってもらう人が多ければ、データの面白さや利用価値に対する気づきが多くなっていくと思うんです。

なので、ユーザーさんにまずは全部使ってもらって、見てもらうことを重視しました。そこで僕らですら気づいていない、日本企業がアメリカのデータをみる価値に気付いてもらえたら最高ですね。その価値が出てきたら、僕らも営利団体なので(笑)、それから収益化をするべきだと思っています。

人間って面白いな、楽しいなと思って初めて前向きな力が生まれて、収益につながるビジネスが生まれると思うんです。だから、面白い使い方が大事なんです。 今は「価値発見フェーズ」です。価値をみんなに分かってもらって、面白がってもらって、そこからビジネスが生まれて、そして、みんなで成功したいんです。

今回の無料開放のゴールは、「無料開放期間をやめないで」という声がたくさん集まることなんです。そうなれば、欲しいデータであることはみんなに知ってもらえたということですから。

USデータ無料開放の詳細はこちらから

ーー無料開放はなぜ3月から4月のタイミングなのですか?

渋谷:まず、やろうと決断してからできるだけ早いタイミングで実施したいという思いがありました。そして、それがちょうど年度の切り替わりのタイミングに相当し、新年度になって4月から新たに海外部門を作るなど、スタートダッシュの戦略策定のタイミングデータの提供を間に合わせたかったという思いがあります。

ローンチ準備の途中でデータの精緻化を図るため、リリースを2週間ほど延期するなど、楽しみにしていた皆様にはご迷惑をおかけしてしまいましたが、高いハードルを超えて最短距離で形にしました。

[App Apeの実際の画面]

ーーなぜアメリカのデータなのですか?

渋谷:一番シンプルに考えて、アプリ業界をリードしている国のデータって面白いよなあと思い、アメリカのデータを開放しました。アメリカはマーケットもでかいじゃないですか。海外に進出する際にアメリカ市場を取れなければ、世界を取れたと言えないところもあるのかなと。もちろん、僕ら自身もアメリカを攻めていかなければいけないなと思っています。メジャーリーグみたいな感じですかね(笑)。

アメリカの経済誌「フォーブス」が30歳未満のスター人材を選出する「30アンダー30」に僕が選ばれた時に同世代で選ばれたのが、野球の田中将大投手やテニスの錦織圭選手なんです。彼らってグローバルで戦っているじゃないですか。グローバルで戦っている日本人がすごく貴重な中、僕らのようなIT企業や起業家もメジャーリーグで戦えたら面白いかなと思って(笑)。メジャーリーグで言えば、野茂英雄選手みたいな存在ですかね(笑)。野茂選手がいたから、田中将大選手、そして今の大谷翔平選手に繋がったわけですし。

ーーどうして日本のIT企業はグローバルに進出するのが大変なのでしょうか?

渋谷:これはすごく難しい問題で、言語とか色々あるとは思うんですが、結局はやるか、やらないか、なのではないかと思っています。ソニーだってトヨタだって、海外に進出した時には成功した企業はまだなくて、その人たちが試行錯誤した結果じゃないですか。結局はやるかやらないかの問題、そしてどこまで覚悟を決めてやり切るかの問題なのではないかなあと思っています


ーーその背中を押すのが今回のUSデータ開放になるということですね。

渋谷:そうです!たくさんの会社が海外進出して、その中から1社でも成功する会社が出れば、きっとノウハウは共有できると思うんです。みんなでトライしてたった一人でも成功者が出ることで、その経験値や成功ノウハウの共有という形で、最終的に全員に返ってくるものだと思うんですよ。なので、メルカリさんも是非成功してほしいです。メルカリの小泉さんやクラシルの堀江さんにも、USデータについてお聞きしてみたいですね。

アプリをやっている事業者さんで、グローバルでやりたいという方がいたら、是非お声がけください!一緒にやりましょう!という応募をここでしておきたいです(笑)。

業界上位3アプリを実際に使ってみてほしい

ーーUSデータのどういうところを見てもらいたいですか?

渋谷:アメリカの有名なアプリやサービスを検索して「こんなに規模があったんだ」とか、ランキングを見て「このアプリの方が利用があるんだ」とか、単純に面白がっていただきたいですね。

一方で、明らかに日本と違うのが、アプリ単体で終わらないサービスがアメリカには結構あることです。なので、例えばパーソナルワイヤレス照明の制御アプリ「Philips Hue」の利用状況など、どういうデバイスがアメリカで普及しているのかを見るといったIOTの視点も面白いでしょう。決済などのフィンテック系の普及力も圧倒的ですのでぜひ見てもらいたいです。

あと、各ジャンルをけん引するリーダーアプリが存在していることが、ランキングなどのデータを見れば分かるので、各事業者さんが関係する業界のアプリ上位3つのデータを見てもらって、アプリをダウンロードして使ってみるというのは、全ての業界の人にぜひやってみてほしいです。

[App Apeのランキング画面]

実際にアプリを使った上で、日本との違いや、ここはすごいなとか、そういうのを感じてもらえればと思います。業界のトップアプリをDLして、「このアプリ、アメリカで流行っているの知っていますか?」と紹介するだけでヒーローです。酒の肴が増えたというか。無料のUSデータでどの業界の方とも一晩酒が飲めるというのを強く推したいです(笑)。

既存のお客様はもちろんのこと、初めてApp Apeを知ったユーザーの皆さんからも幅広くデータを見ての感想をいただきたいですね。

アプリそのものへの興味が一番大事

ーーアプリマーケティングに必要不可欠なものは何ですか?

渋谷:僕らはデータを扱う会社なので、「データが一番」というのは言いたいですけれど、それはあえて大前提ということで置いておいて、僕は「アプリというものへの興味」が一番が大事で、アプリのデータを見て面白いと思えるかどうかなのだと思います。

アプリがうまくいっている会社って、いろいろなノウハウや施策はあれども、楽しそうにデータを見てやっている人が必ずいるんです。

その面白いと思うきっかけに、App Apeのデータがなれば良いなと思いますし、データの面白さを発信していくことも僕らの役割だと思います。楽しんで作られたプロダクトに勝るものはないですからね。

ーー期間は今回は25日までのなのですか?

渋谷:もっと見たいという声が出て来れば、延長も考えてもいいのかなと思います。まずは価値を発見してもらうことが重要なので、できるだけ多くの人にデータを見てもらって、じゃんじゃん使ってもらって、いろいろなフィードバックをいただけたらと思います。アメリカのデータを見てApp Apeを知ってくれた方々を含め、いろいろなご意見をいただきたいです!

さらに詳しいデータや他のアプリの時間帯ごとのアクティブユーザーの動きなどを知りたい方は、お気軽にこちら からApp Apeの無料版をお試しください。