逆転オセロニアに学ぶコミュニテイの育て方 香城卓プロデューサー(けいじぇいP)

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ダウンロード数2000万を突破した「逆転オセロニア」。App Ape Labでは、逆転オセロニアのプロデューサーである香城卓氏(けいじぇいP)にインタビューを敢行し、愛されるゲームの秘密やコミュニティマネジメントで重要なポイントを伺いました。長編インタビューとなりますが、ゲームだけでなく、コミュニティを核とした事業や取り組み全てに当てはまる内容ですので、ぜひお読みください。(敬称略)

「逆転オセロニア」プロデューサー
香城卓氏(けいじぇいP)
株式会社ディー・エヌ・エー

ーー2000万DL到達について、率直な思いをお聞かせください。

けいじぇいP:ちょうど2年2ヶ月で到達しましたが、2年2ヶ月前はこんなに遊んでもらえるとは思っていませんでした。ユーザーさんが特にこの1年間で指数関数的に増えていったのは、初期の頃のユーザー、ファンの方々の支持が一番大きかったというのが大きいです。

オセロニアンのみなさんの支持が日増しに増えていったのが原動力だったと思います。なので、自分たちのプロモーションがうまくいったからというのは全然思いません。本当に遊んでもらって、ファンの方々から支持をされた結果だと思います。

[2000万ダウンロードの軌跡(DeNA提供)]

ーー特にファンのみなさんの思い入れを一番に感じた瞬間はいつですか?

けいじぇいP:いつも本当に皆さんに思い入れをしてるのですが、特にファンのみなさんの強い思いを感じたのは、2018年2月の2周年イベント「オセロニアンの祭典」でした。2年間遊んでいただいた恩返しを僕たちがしようと開いたイベントだったのですが、思いがけないことが起きたんです。

祭典が終わってから、ユーザーさんが5分だけお時間いただけませんかという形でお声がけいただいて、たくさんの方が待ってくださっていたので、行ってみました。すると、全国の北海道から九州までのオセロニアンのみなさんの寄せ書きをいただいたんです。

百数十人分の寄せ書きですよ。これどうやって作ったんだろうって思って。イベントが終わってからこの寄せ書きを渡した瞬間も、ゲーム実況アプリ「Mirrativ」で全国のオセロニアンのみなさんが集まって配信をしてくれたんです。めちゃめちゃ嬉しくて、もう涙が出るくらいでしたね。

けいじぇいP:この寄せ書きを見ると、2000万DLという中でも人のつながりみたいなものが生まれていったのだというのを実感します。皆さんからの感謝の言葉はもちろんなんですけれども、オセロニアがそれぞれの思い出になってきているという実感がありますね。

ユーザーさんとの距離でいうと、オセロニアは日本最高峰だと思っています。

ーーこの1年で最も注力したことは何ですか?

けいじぇいP:コミュニティマネジメント、これに尽きます。

2000万ダウンロードまでくると、本当に美談に聞こえちゃいますけれど、最初の頃は全然ダウンロード数もアクティブユーザー数も少なかった時から地方を回って、全国にオセロニアを応援してくれる人達がいるというのを知っていったので、そういう人達がつながれる場所を作るということに注力しました。

会社からは「本当に意味あるの?」という風に後ろ指を刺される時もありましたけれども、でも、きっと応援してくれる人達が、大きくプロモーションを打つタイミングで、我々の呼び水になってくれるという思いでやっていました。

僕自身、2017年度だけで30カ所は回っていますね。週末って1年間で52週しかないんですけれど、その半分以上はどこかに出張です。

本当ににそれくらいの頻度でやってきたのは僕らのオンリーワンだと思うし、2000万DLに至った一番大きな背景だと思います。

2000人のイベントを1回やるよりも、200人のイベントを10回やる

ーーコミュニティマネジメントで一番大切にしていることは何ですか?

けいじぇいP:コミュニティマネジメントで一番大事にしているのは、主役は運営ではなくユーザーだ、ということです。

これ、口で言うのは簡単ですが、実際はとても難しいことなんです。

「俺たち楽しかったねえ、あんなに集まってくれて」ではいけないと思っています。

イベントって、ユーザーさんが来てくれて初めて成り立つんです。一人で勇気を出して来てくれたオセロニアンもいると思うんですけれども、そういうユーザーが友達を見つけて、時には注目を集めて、そこで初めて意味があるんです。

来てくれた人たちをいかに主役にするのかは、オンライン、オフラインでもとても重要です。

なので、オセロニアの場合、数千人規模のイベントは年に1、2回だけにしているんです。

僕らは2000人のイベントを1回やるよりも、200人のイベントを10回やる方がだんぜん価値が大きいと考えています。参加人数よりも、ユーザーさんとのコミュニケーションの質の高さが重要だと思っているんです。コミュニティマネジメントの最も重要なところだと思っています。

1回3時間のイベントの中で、500、600人になると、全ての人とお話しできないと思うんです。盛り上がる方は盛り上がって、ちょっと孤独感を感じて帰る人もいるかもしれなくて。感覚として200〜300人ぐらいだと全員とお話しできて、お互いが知り合いとして話し合える限界というのを、肌感覚でつかんでいった結果が、200人規模のイベントをたくさんやるということでした。

ーーその場所でユーザーさんからのアプリに関する要望を聞く機会があると思うんですけれども、どういう風に聞いているんですか?

けいじぇいP:ユーザーさんからの要望は、僕は直接聞く時間を設けています。例えば、全国各地で「オセロニアンの宴」が終わってから、交流会の時間を作り、そこで直接プロデューサーが聞く時間を設けるのです。

カスタマーサポートへの連絡よりも、僕に言えるということが大きいんです。すべては答えられないですが、コミュニケーションで答えられることは答えます。そして、コミュニケーションを取ってくれたユーザーさんが僕の話を様々な形で発信してくれます。嘘のないコミュニケーションという意味で、直接話をすることはすごく大事になるんです。

コミュニティマネジメントの肝は、「厳しい局面でこそ逃げないこと」

ーーコミュニティマネジメントで重要なことはなんですか。

けいじぇいP:コミュニティマネジメントの肝は、「厳しい局面でこそ逃げないこと」です。例えば、サーバー障害発生した際、こちらから経緯とお詫びを出したが、遊んでいただいているお客さんは当然それでは納得しませんでした。

そこで、翌々日に僕らは謝罪の動画を上げました。サーバーの負荷によって起きたという原因、初動で補填できなかったこと、次回の対策、顔を出して正直に説明し、謝罪しました。コメントは、叩かれるかと思いましたが、むしろ逆でした。僕が、自分の言葉で、温度感のある言葉で語ったことに対する評価もありましたし、そこまで言うなら、次回に期待しますかと収束してくれました。

もちろん、ないに越したことは無いのですけれども、やはり、僕たちにとって都合の悪い時に隠れることは簡単にできるが、そういう時にこそ矢面に立つ覚悟でユーザーさんに接するし、だからこそみんなが喜んでくれている楽しんでくれているという瞬間に立ち会う権利があると思います。ということが、ユーザーさんと自分の信頼につながっていることを感じています。

ーーこれからコミュニティを作って盛り上げていきたいと考えている企業の担当者が一番最初にやるべきことは何でしょうか?

けいじぇいP:ソーシャルゲームはもちろんゲームではあるのですが、サービスとしての側面があると僕は考えているんですね。

eスポーツのようにシリアスに対戦型でやっていくというのに力点を置くゲームもあれば、われわれのようにアットホームなところに力点を置くゲームもありますと。でも、最初の修飾語でどういうゲームなのかというのを発信してあげるのてすごく大切だなと思っています。

自分たちの居場所としてのこのタイトルって合ってるかどうかという点を重視していて、逆転オセロニアは、安心して楽しめる対戦ゲームというのものをビジョンとして持っています。

親子でイベント参加しても危なっかしくなかったり、女性同士で来ても疎外感がなかったり、もちろん強くなりたい人には強くなるための場所があったり。でも全体としては安心があるというところをすごく重視してきたんですね。なので、公式ツイッターを作りましたという時も、このゲームでこういうイベントあります!という時も、どういう場所か、どういうサービスなのかをちゃんと定義して、メッセージがぶれないようにするということが重要な気がしますね。

われわれがどういう思いで運営していて、どういう風に皆さんに楽しんで欲しいのかというところを発信していく。そして、運営しているチームでみんながその思いを共有していることが重要なんです。

僕もオセロニアをやるまではそういう実感が全然なくて、ずっとそのゲーム性の中での話だったりとか、まあ、ある種マネタイズ手法をどう作るかとか、そういうところだけに注力していたんです。

DeNAも他社さまからお預かりしているIPがほとんどで、オリジナルタイトルとして大きなユーザー数を得たことは初めてだったので、世の中にどういう風に届けていくのかというのは議論しました。

その中で、オリジナルタイトルだし、何の色も無いがゆえにどういうサービスであるかをちゃんと押し出していくというのを決めました。

プラットフォーム含め、SNSもそうですけれども、ユーザーさんにとって、アプリというのは自分自身の居場所でもあると思うんですよね。そういうところの目印というか、「タグ付け」をしてあげるみたいな、そういうことが重要である気がしますね。

そういう意味では、内部の組織も、サービスとしてこうありたいと思っているところに共感してくれるメンバーだけで構成するべきだと思います。(タグ付けは)チームメンバーの意思統一にもなりますし、ゲームの施策に対し正しいか、正しくないかの指標にもなると思うんですよね。

価値判断は「ユーザーさんが安心して楽しめる対戦ゲームか否か」

ーーチームをマネジメントするにあたって、一番大事にしていることはなんですか? 

けいじぇいP:僕自身は、チームが実施する施策にはあんまり口出さないんですよ。ただ、その施策の意思決定をどういう風にやったのか、それがユーザーさんに届けたい価値とつながっているのか。ユーザーさんが安心して楽しめる対戦ゲームか否かという点で判断をしているのです。

そうするために、意思決定していくための基準を、まずそれぞれのセクションに考えさせる。それを僕が聞いて、安心して楽しめるというところにつながっていくかどうかの判断をします。

逆に、細かなキャラクターがどうなっているのかとかは、もちろん大事なんですけれど、僕はほぼユーザーさんと同じタイミングで知るくらいの感じですね。

もちろん、うまくいったかどうか後で振り返るんですけれども、こっちにした方が売上が上がるんじゃない?というある種の邪(よこしま)な意思決定をしなかったどうかはすごい気にしますね。

ある新規のキャラクターがめちゃくちゃ強くなるみたいなインフレがユーザーさんの喜びなればいいんですけれども、その意思決定の過程でインフレが「売上が上がるから」というのだけではNGですね。

このキャラクターに対する対抗策があった方が、持っている方にとって安心感があるというインフレだったらいいかなと思っています。安心感が保たれていれば口出しは本当にしないです(笑)。

ーーご自身がKPIとして日々チェックしているデータは何ですか?

けいじぇいP:アクティブユーザーのレイヤーを何レイヤーかに分けてその中でも、ヘビーユーザー、いわゆるロイヤルオセロニアンみたいな人たちがちゃんと増えていっているか、というところが最大の僕の中でのKPIです。

2016年のリリースからロイヤルオセロニアンは日々増えていて、完全に純増しているんですよ。この数って別の指標ではあるんですけれども、コミュニティの広がりとほぼ同じ形なんです。近視眼的にアクティブユーザーの増減を見るよりも、オセロニアを深く楽しんでいるユーザーさんがちゃんと溜まっていっているかというのを見る方が健全だと思います。そこはダウンロード数ともほぼ相関がありますけれども、全く減っていないというか、ものすごく増えているという状況ですね。

ーーApp Apeのデータでもヘビーユーザーの割合は増え続けています

けいじぇいP:そうなんです。インフルエンサーになってくれている人もこのヘビー層に入っていると思うんですよ。我々としても今やっていることの自信につながっていますね。

事業成長の観点でも、1年、2年売れてばあっと終了となっていくよりも、オセロニアが今このペースでこれから先、5年、6年というふうにいった方が、事業価値が最大化すると思います。

安心して楽しめる対戦ゲームであること

[2000万ダウンロードを記念した生放送で]

ーーけいじぇいさん自身が「フリー素材です」と宣言するように、自ら積極的に発信をしていくのはなぜですか?どんな想いがあるのですか?

けいじぇいP:これも、実は安心して楽しめる対戦ゲームであること、安心感を醸成するためなんです。たとえば、消費税が10%になるという書面が出るのと、安倍首相がどういった狙いで10%に引き上げるのかをいうのでは全然違うじゃないですか?どういう人が運営しているのかって、すごく今重要な時代人来ていると思うんです。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが前に出る意味ってすごく大きくて、彼のクレバーな空気が重要だったりするわけです。言葉にしていないけれど、世の中がそう見てくれているからです。

だから、意思決定の代表として僕がいるのならば、僕がどういう思いでゲームを運営しているのか、どういう思いで見ているのかを知ってもらった上でゲームをしてもらった方が、サービスとしての安心感が生まれると思うんです。そのために、自分の性格や私生活をさらけ出してコミュニケーションしています。

どういう人がやっているかがとても重要な時代になっていて、そのためにやっている感じですね。僕の人柄に共感してもらうくらいの気持ちでやっていますね。

ーー背景を話すことをすごく重要視されているということですか?

けいじぇいP:はい、そうです。3、4年前はユーザーのアクティビティデータに基づき、施策を打つという感じで、今もそういう部分はあるんですけれども、今の時代は共創の時代だと思うんです。僕らが数字を勝手に判断して施策を打つのではなく、僕らがユーザーさんの意見をもとに、対話形式、キャッチボールで一緒に作っていくべきだと持っているんです。

究極的には僕らが動かなくても、ユーザーさんが自分たちのためのコンテンツを作り、ユーザーさん自身が主役になるのが理想で、それが新たに追加したカスタム大会なんです。まさにユーザーさんが主役になっていく、ゲーム共創時代になるのが次の時代観だと考えています。

[2000万ダウンロード記念パーティーで]

ーーゲームがいつまでも愛されるために大切なことは何ですか?

けいじぇいP:ゲームがいつまでも愛されていくためには、短期的なKPIで計らないことが重要だと思います。1ヶ月くらいで起きたこととか、作った売上とか、NUUとかは気にしないで、ユーザーが自分たちの世界を広げていく構造を作っていくためにはどうするかを考えるべきだと思います。

瞬間の短期的な結果を作っていくことに、人間って引っ張られがちだとは思います。でも、3年後に今の10倍、20倍のユーザーが遊んでくれているという、長く愛されるという状況からの逆算した積み上げが重要だと思うんです。

インスタグラムもスーパーヒットするまで5、6年かかっているわけじゃないですか。世の中の時計の針が合うまで時間はかかりますし、ソーシャルメディアと同じような成長曲線をしているのがオセロニアだと思っていて、長い目線でみて、意思決定を短期KPIに引っ張られないことが大事なんです。ゲームや事業の目指したい姿を固めて、時間軸も含めて逆算していくことが重要だと思います。そういう意味で、僕は時代は変わったと思っているんです。短期的なKPIが厳しい時にこそ、売上以外に何か必ず見落としてはいけない大切な指標があるはずなので、健全な指標を見続けることが重要だと思います。

ーー今後のお話・予定をご教授ください。

けいじぇいP:ユーザーさんの声をもらいながら、カスタム大会の機能をブラッシュアップするなど機能ををどんどん追加したい。次はユーザーさん自らがコミュニティの中にコンテンツを作っていける機能を作っていきたいですね。

あとは住んでいる地域、土地土地でオセロニアンのつながりを作るというのが重要だと思っています。日本中にオセロニアンがいるので、これからも、まだ見ぬ新しいオセロニアンに会いに行きたいです!