App Ape Award 2018 分散か集約か。ヤフー・Gunosyが語る、プラットフォーム化と今後の戦略

App Ape Award 2018でのセミナー風景
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情報キュレーションサービスやニュース配信アプリを開発・運営している株式会社Gunosyと、日本最大級のポータルサイトを運営するヤフー株式会社。それぞれメディアのアプリだけではなく、次々と新しいサービスを提供しています。

今後の動きはもちろんのこと、気になるのは両社のサービスのプラットフォーム。同じサービスをアプリとWeb両方で展開している場合もあれば、アプリだけで展開している場合もあります。この選択の違いには、どんな事業戦略が埋め込まれているのか、サービスはそれぞれ「分散」と「集約」、どちらへ向かうのかーー。

2018年に注目が集まったアプリや急成長したアプリを表彰する「App Ape Award 2018」では、「分散か集約か。ヤフー・Gunosyが語る、プラットフォーム化と今後の課題」と題し、フラー株式会社の杉山信弘氏をモデレーターに、ヤフー株式会社の小林貴樹氏と、株式会社Gunosyの大曽根圭輔氏をゲストに迎えて、プラットフォームに関する両者の展開についてパネルディスカッション形式で伺いました。(敬称略)

ヤフー株式会社
小林貴樹氏
メディア統括本部 スタートページユニット ユニットマネージャー

プロフィール:2005年に広告代理店に入社。主にインターネット領域のプランニングを担当。2012年にヤフーに入社しCOO室・スポーツナビを運営するワイズ・スポーツ代表取締役を経て、現在はYahoo! JAPANアプリ・Yahoo! JAPANトップページ・Yahoo! ニュースなどを管轄するスタートページユニットの責任者を務める。

株式会社Gunosy
大曽根圭輔氏
執行役員メディア事業本部 グノシー事業担当

プロフィール:筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。株式会社サイバードにてデータ分析部門立ち上げ等を担当後、当社へ入社。2018年9月より執行役員メディア事業本部、「グノシー」事業担当。

アプリ?Web? 2社の選択基準とは

杉山:ヤフーはPCの頃からずっとサービスを展開されていて、そこからアプリ、Web、さらに再びアプリへと戻ってきていますよね。そこで、まずはヤフーの歴史から紐解いていきたいのですが……。

小林:ヤフー株式会社の歴史はPC時代から始まっていて、その頃すでに「yahoo! news」「yahoo!天気」を展開していました。その後、iPhoneが発売されて、スマホのWebサイトを作るようになるわけですけども、そこからしばらくの間は、アプリを盲目的に作る時代が続きました。このように、様々なプラットフォームで展開してきた歴史があるので、「アプリで出すべきか」「Webでいいのではないか」「そもそもPCサイトは必要なのか」という議題はよく社内で上がります。

杉山:その議題に対して、結論に至るための条件や選択基準などはあるのでしょうか。

小林:条件は大きく分けて2つあります。まずひとつはプロダクト面です。アプリでしか再現できないUI/UXがあるのか、ログインは必須なのか、セキュリティ面に不安はないか、これらが条件として挙げられます。

ふたつめは集客力といったマーケティングにおける条件です。すでにWebサイトがあるものでアプリを作るのであれば、集客はそこまで難しくありません。しかし、まったくの新規サービスなら、新しく人を連れてくる必要があります。もし集客力に不安がある場合は、弊社ではWebサイトからライトに始める傾向が強いですね。

杉山:大曽根さんはいかがでしょうか。

大曽根:Gunosyはスマホとともにスタートして、アプリで成長した会社なので、ヤフーさんとは考え方がまったく逆ですね。そのため、条件としてはアプリが第一選択肢になります。例えば、動画などはネイティブアプリじゃないとできないユーザー体験がありますから、そういった時にはアプリでやろうという姿勢です。

もうひとつの条件は、顧客の獲得コストです。最近は、アプリの顧客獲得コストが上がっているように思うんです。ここをクリアにすることが、アプリをスタートするかどうかの判断基準になります。

しかし、一方では、「Webの価値はどこにあるのか」という追求もしています。弊社は複数のプロダクトを出しているので、同じ機能をすべてのプロダクトに実装しようとなると、Webというチョイスになりますね。

「お得さ」というフックはメディアにも拡大

杉山:選択基準がまったく違う両社ではありますが、それぞれ、ヤフーはPayPay、グノシーはクーポンサービスと、実世界との連携がどんどん広がっていますよね。これらの新サービスについて、進捗を教えてください。

小林:詳しい数字は言えません(笑)。でも、最初に行った総額100億円キャンペーンは、わずか20日間で終了しました。購入金額の20%がバックされるとあって、多くの人が家電量販店などで高額商品を購入されたのですが、これが大きく刺ささりましたね。現在、2回目のキャンペーンを開催していますが、今回は、1回の買い物の上限額を設定しました。理由は、KPIが「ユーザー獲得」から「決済回数を増やすこと」へと移行したからです。

杉山:ちなみに、PayPayは、単独アプリのものとヤフージャパンの2つで展開していますよね。両方とも環境はほとんど同じなのに、どうして別々に提供をしているのでしょうか。

小林:様々なユーザーにPayPayを使って欲しいからです。新しいものに飛びつくユーザーはそのままPayPayアプリを利用しますが、そうでないユーザーはヤフーから誘導することができます。それと、今後の展開を考えると、2つ持っていた方が機能的な開発もしやすいんですよね。

杉山:なるほど。Gunosyで提供しているクーポンサービスにも似通った点がありますよね。グノシーで発行するクーポンとは別に、発行元である会社でもクーポンが発行されています。グノシーを利用するユーザーと、発行元から利用するユーザーには違いが見られるのでしょうか。

大曽根:両者の大きな違いは「目的意識」にあります。グノシーからのクーポン利用者は、明確な目的が最初にあるわけではありません。反対に、自社アプリからクーポンを得る人は、その商品が食べたいという目的が最初にあるんです。
人間の日常的な衝動として、ニュースを見ること、食べることは頻度が高い行為です。グノシーでニュースやコンテンツを見た時に、クーポンに気づいて、「あ、それなら行こうかな?」と目的がない状態から想起させるのが狙いです。

小林:グノシーを見たことで「お得さ」を感じて購買へ至るわけですよね。サービスにおいて機能性が大切なことは大前提なのですが、最近は、この「お得さ」が付与されていることが当たり前という風潮が強くなってきたと感じます。ゲーム業界では以前からフックとして存在していましたけど、それがメディアにも参入してきた。これが2018年でとても印象的な出来事でした。

杉山:確かにそうですよね。メディアを運営しているといっても、それぞれのサービスへの目的というか、運営方式がまったく違いますね。

目的がある人はアプリを利用するという点までは同じなのですが、ヤフーはサービスからコンテンツに興味を持つという流れで、グノシーはコンテンツからサービスへ興味を持つという流れがあると。ちなみに、これは私の肌感覚ではあるんですが、新しい決済系サービスがどんどん出てきていると思うんです。ヤフーの小林さんが気になるものはありますか?

小林:PayPay、LINE Pay、楽天が有力候補だと思います。

決済サービスが先行しているインドや中国の状況を見ていると、IDをたくさん持っているか、オンラインコマースサービスを持っているか、もしくはすでに小売店とつながっているかという部分がすごく重要な点だと感じます。

LINE Payは小売店、オンラインコマースは楽天と、それぞれアプローチは違いますが、この差別化により残るではないかと。

IDの基盤へウォレットがつながっていて、そこへ自前のクレジットカード会社があって、銀行を保有しているというラインナップをしっかり揃えないと、手数料が発生していない現段階ではビジネスモデルが作れません。ですから、こうしたラインが揃っている会社が強いのではないでしょうか。

杉山:……グノシーペイは始めないんですか?(笑)

大曽根:そうですね……(笑)。例えば、グノシーのユーザーがどんなニュースを見ているかをもとにして、他社との連携の可能性はあるかと思います。

2社の今後は「分散」か「集約」か

杉山:ここまでのお話を聞いていると、分散と集約を交互に描いているのがヤフーさんで、グノシーさんは現在、分散へ向かっているように思えます。それぞれの戦略として、現在はどちらの方向へ向かっているのでしょうか?

小林:プロダクトのラインナップとして、どちらが正しいかについてはまだ結論は出ていません。事業戦略上は、メディアコマース、金融とより密接に連携させていくことが大元の戦略です。そこで、今までメディア事業とコマース事業というまったく別の形態だったものをどうつなげていくかという事業計画が発生しています。

これを前提とした上で、分散か集約かという話になりますが、2018年は分散でした。

過去を振り返ると、PCからスマホへ移住していた過渡期があって、そこから数年経つと、母艦戦略が始まって、アプリを集約して集客力の高いものを作ろうという動きが出てきます。その後は、PayPayなど事業が多角化してきて、再び分散が始まりました。

その流れでいえば、事業戦略上では集約の年ですね。しかし、分散でも連携の仕方があるのではと模索もしています。

杉山:Gunosyさんはいかがでしょうか。

大曽根:分散する時は、ユーザー獲得チャネルがしっかり分離しています。

弊社が提供している「ニュースパス」というアプリがありますが、当初は必要性に疑問の声もありました。しかし、獲得チャネルがはっきりと分かれていたので、結果的にはすごく伸びたんです。

一方で、ユーザーのデータを収集したいのであれば、集約の方向だと思います。例えば、ユーザーが、この時間はタクシーに乗っている、この時間は買い物をしているという情報があった状態で、各ユーザーの動きに合わせた記事の配信をしようというのであれば、ひとつのアプリにたくさんの機能を載せたほうがいい。顧客獲得コストを考えても集約のほうがパフォーマンスがいいですから。

今後の展開においてお互いに気になることとは

杉山:ここからは、相互質問をしていただきたいのですが、まずは、Gunosyの大曽根さんからヤフーの小林さんへお願いします。

大曽根:プロダクトの作り込みについて、どんな組織形態で行っているのかが気になります。
市場がある程度成熟期に来ていて、今後は使いやすさがフォーカスポイントになるのではないかと思っているので、プロダクトを作り込む人と集約に注力する人との関係値を知りたいですね。

小林:ヤフージャパンアプリという一つのアプリの中に、サービスマネ―ジャーがいて、さらに、タイムライン系を見ている人、通知系を見ている人、ツール系を見ている人などプロダションで分かれています。また、プラットフォームについても、通常とタイムラインの2つに分かれていて、それをもとに1つのバックエンドとフロントエンドを作っているんです。

これだけ巨大な複数の機能を持つアプリを運営していると、必然的に責任者もたくさんいるわけですから、並列に並べてしまうといちいち議論をしないと何も決まらなくなってしまう。作り込みという観点だと、近しい機能を作っている人で、毎日顔を突き合わせて、ああでもないこうでもないと話し合っていたほうがいいよね、という考え方です。

杉山:それでは、次にヤフーの小林さんからGunosyの大曽根さんへ質問をどうぞ。

小林:ずばり、次は何を企画しているのでしょうか。グノシーさんは、昨年から「グノシーQ」というライブクイズの動画番組を配信されていましたが、実はヤフーでも研究していたんです。今度は先を越されないよう、目玉リリースを知りたいんです。触りだけでも……!

大曽根:会社としては何も言えません(笑)。自分が個人的に一番重要視していることで言えば、アクティブユーザーと滞在時間ですね。あとは、グノシーというアプリの立ち位置をどうするか考えています。ニュースサイトなのか、ポータルサイトなのか、それともまったく別のものなのか。

杉山:今回、それぞれの方向性や目を付けているポイントについて、かなり有意義なお話をおうかがいすることができたと思います。

杉山:最後に、2019年に取り組んでいきたいことをお聞かせください。

小林:新聞、雑誌、動画、テレビをリプレイスして作る時代は終わったと考えています。今年のキーワードは「便利」です。交通や暮らしなどユーザーが便利に感じる領域で貢献していけるようにしたいですね。しかし、「便利」とは何かを考えると、これがすごく難しいんです。

大曽根:今年は分散の方向性ですかね。ニューステキストのコンテンツで成長して、昨年からはクーポンなどサービスを広げていますが、2019年はコンテンツフォーマットにあったユーザー体験を作り込んでいくことにフォーカスしたいと思います。

杉山:ニュースメディアとしてトップを走っている2社の目的の差別化や、本講演のタイトルでもある「分散」と「集約」の選択基準など、参加者にとってかなり有益な情報が聞けたのではないでしょうか。本日はありがとうございました。

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様々なサービスが展開されていく昨今、今後の展開に頭を悩ませている企業も多いのでは。しかし、市場が成熟期に入ったからこそ、ビジネスにおいて必要な条件や選択基準も明確になっているともいえます。

ヤフー、Gunosyの両社のプラットフォームにおける方向性や、現在注目しているサービスなど、かなり深い部分までお話をいただけた本講演。新しいサービスを考える企業にとって、たくさんのヒントがあったのではないでしょうか。

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著者プロフィール:ヤマウチカズヨ
大手出版社の書籍編集者からフリーランスのライター、編集者へ。IT関係、車、旅行や美容など趣味を活かして幅広く執筆。最近はバイクにはまっており、暇さえあればツーリングへ出かけている。
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