「なんとなくデータ活用」にならないための、マーケターとデータの理想の関わり方とは?

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 マーケティングにおいて必須となった「データ活用」。しかし、「なんとなく」のデータ活用になっていないでしょうか?「App Ape Award 2019」ではLiftoff Mobile株式会社天野耕太氏、dely株式会社野村知己氏、株式会社Gunosy石井健輔氏、グリー株式会社加藤耕輔氏による『データドリブンに施策を生み出す。マーケターとデータの関わり方』を開催。積極的なデータ活用事例が紹介されました。

Liftoff Mobile株式会社
天野耕太氏
Country Manager, Japan and Korea

天野耕太氏プロフィール
Overtureおよびヤフーにおいて配信メディアネットワーク拡大に寄与。その後、インドのInMobiに参画し、黎明期のスマートフォン広告業界において日本事業立ち上げを経験。2012年よりCriteoに入社し配信ネットワーク部門の統括と営業部門の統括を歴任した後、2017年より現職であるシリコンバレーのモバイルDSP、Liftoff Mobile株式会社(リフトオフ)のカントリーマネージャーに就任し、日本および韓国のビジネスを担当。

dely株式会社
野村知己氏
執行役員 マーケティング本部 管掌

野村知己氏プロフィール
2009年九州大学卒業後、インターネット広告代理店に新卒入社。アプリに特化したソリューション事業を責任者として立ち上げ、大手企業を中心にコンサルティングを行う。2018年1月よりdelyにジョインし、オンライン/オフライン問わずマーケティング全般を統括。2019年4月よりマーケティング担当執行役員に就任。

株式会社Gunosy
石井健輔氏
メディア事業本部グノシー事業部マーケティンググループ マネージャー

石井健輔氏プロフィール
2016年に株式会社セプテーニに入社。国内外のアプリクライアントのデジタルプロモーションを担当。 2018年よりGunosyに参画。「グノシー」やKDDIとの共同事業「ニュースパス」、「LUCRA」のデジタルプロモーション担当を経て、現在は「グノシー」のマーケティング責任者としてアプリ内の企画ディレクションや、テレビCMなどオンラインからオフラインまで幅広く管轄。

グリー株式会社
加藤耕輔氏
WFS事業本部 Marketing部 User Acquisitionチーム マネージャー

加藤耕輔氏プロフィール
1988年生まれ。2013年グリー株式会社に入社。入社後はゲームプランナー、ゲームプロデューサーに従事した後、マーケターに転身。 複数ゲームタイトルのデジタルマーケティング、子会社のマーケティング組織立ち上げ・責任者を経て、2019年よりグリー株式会社のゲーム事業ブランドであるWFSにマーケターとして参画。現在はWFSが提供する全てのゲームのデジタルマーケティングを統括。

データを能動的に取りに行かずとも受け取れる仕組みを構築

天野:本日はデータ周りの仕事を普段されている皆様にお話しを伺っていこうと思います。簡単に私の自己紹介ですが、Liftoff MobileというアメリカのモバイルのDSP、アプリの広告を専門にやっている会社で、日本と韓国の事業を見ています。

野村:delyの野村です。社名よりも、運営しているレシピ動画サービス「クラシル」の方が有名かもしれません。当社はマーケティング組織の中にコンテンツ制作チームも内包しているのが特徴で、レシピを考案するフードプランナー、動画を制作する編集、カメラマン、デザイナーもマーケの中にいるんです。

天野:マーケターの範囲が広いですね。

野村:マーケターはプロモーションだけ見る、というケースも多いと思いますが、ユーザーに提供する価値・体験の設計やプロダクトづくりまで入らないことには、本質的なマーケティングはできないのかなと。

石井:Gunosyの石井です。プロダクト、プロモーション両方を見ています。

加藤:グリーの加藤です。ゲーム事業ブランドのWFSでマーケターをやっています。

今までWFSはデジタルマーケティングにあまり力を入れられなかったのですが、注力すべく2019年10月、Marketing部の中にUser Acquisition部門が新設されました。

天野:デジタルマーケティングに力をあまり入れられなかったとのことですが、何か課題が出ていたのでしょうか?

加藤:ゲーム市場はコモディティ化が進み、同じようなターゲットに対して入札しているような状態でCPIもどんどん高騰していったんですよね。もう少しデータをマネージメントして、デジタルマーケティングと向き合う体制が必要だと。

天野:なるほど。今回皆さんにまず「現在のデータ活用に対しての取り組み」について伺えればと思います。

野村:当たり前のことですが、あらためて大事なのが「全社員がデータに近くなる」ことかなと。

アプリのMAUなど、全社員が把握しておいたほうがいい情報は能動的でなく受動的に受け取れるようSlackに数値がbotで配信される環境にしています。

一方で、その数値からブレイクダウンされたもの、例えば僕らのレシピ動画サービスの場合「検索数」や「お気に入り数」など、全社員が把握する必要がないものはTableauというツールを使って可視化し、主にKPIを追っているメンバーがトラッキングする仕組みにしています。
最近意識しているのはKPIを短期、長期で分けて考えることですね。MAUやDAUは収益に直結するので短期的に見ていかないといけない。でも一人当たりのお気に入り数、検索数、視聴数って、サービス側で大きなアップデートを行わない限りデイリーでめちゃくちゃ変化するものでもなくて、でもじわじわ下がっていたりもして異変に気付きづらいことが多いので、長期目線で追うようにしています。

あと気を付けているのが「サイレントマジョリティの声を聞く」ことです。例えばCTRが1%、CVRが1%で、1人がコンバージョンした施策があったとしたら、その裏にはコンバージョンしていない9999人がいるわけで、その人たちにネガティブな影響を与えてしまっているかもしれない。1人の指標が改善したとしても、9999人の数値が落ちていたら全体で見るとむしろ失敗です。普通に考えるとわかることではありますし、データの環境さえ整備されていれば追えるにも関わらず、意外と見逃しがちです。

当社はマーケティング組織の中にデータアナリストを置いたのが、よりデータに重きを置くきっかけだったと思います。

天野:データアナリストの採用は難しいと言われていますが。

野村:どこまでのスキルを求めるかにもよると思います。たしかに自ら課題を発見できるデータアナリストの方は希少だと思います。がデータを抽出し、加工するスキルを求めるのであればツールさえ使えばできますから。

天野:では石井さん、Gunosyのデータ活用に対しての取り組みについて教えてください。

石井:今の野村さんの話に似ているんですが、KPIをbotでSlackに通知することはやっています。スラックの中でも部屋を細めにわけています。ニュース記事の品質を確認するチームの部屋、クーポン関係の部屋など分かれていて、そこに毎時間くらいの頻度でbotから数字が来るようにしています。

例としてプロモーションに関わるチームだと、広告媒体ごとのDL数が一時間ごとに通知されたり、あとはアドフラウドの疑いのある動きもBotで検知ができる状態にしています。

僕らは「マーケの中にアナリストの人を採用する」というよりは、「マーケの人がアナリストっぽいことをできるようになろう」という発想で運用しています。学生インターンも全員SQLで簡単な集計をできる状態にしています。全員がデータを根拠に会話する文化が醸成されています。

天野:社内の方に習得していただくと。それって簡単にできますか?

石井:簡単なレベルならエクセルを覚えるテンションでいけますね。野村さんがお話されていた「そもそも何を分析したらいいんだっけ?」はかなり難しいですが、「これを集計してね」は難しくないです。

天野:では加藤さん、グリーの現在のデータ活用に対しての取り組みについて教えてください。

加藤:グリーはグループ企業が多く、結構なタイトル数があるので、横並びで比較できることを重視しています。成功や失敗を見える化してスムーズにやっていくことを重視しています。基礎KPIに関しては社員なら誰でも閲覧可能です。

さらに最近WFSではマーケティングのレポートの自動化を進めています。プロダクトによって取引のある代理店が違って、マーケターがそれぞれレポートを作っていて無駄も多かったんです。それを統一して自動化していくことに取り組んでいます。コンセプトは「新入社員が研修なしでパソコンを開いてデータ分析ができる」ですね。

天野:加藤さんに伺いたいんですが、「モノづくり」の人のマインドセットは「データと真摯に向き合う」ことにおいてカルチャーの違いを感じたりもしますか?

加藤:クリエイティブ側に振っていた時期もありましたね。データというよりは面白いものをつくろうと。ただ、それだけだと厳しい。せっかくいいものを作るならデータドリブンでより多くのお客様の手に届けていった方がいい、という方針になりました。

自分の仕事が会社に貢献したことを、データで可視化する

天野:「データを重視しよう」と言えば全員YESと言うでしょうけれど、実際にそれを日々のものとして定着させていくのはすんなりいかなかったりしますよね。社内的にデータを重視するカルチャーをどう作っていったのでしょうか。

野村:これを言うと元も子もない気がしますが「経営層がデータを重視しているか」は大事だと思います。

マーケ組織の中でもどれだけデータを重視するかの温度感は分かれます。例えばプロモーションやCRM担当者はデータをかなり見ますが、例えばコンテンツを作っているチームが、日頃から数字を意識するというのも普通は結構難しいじゃないですか。

でも、その間を埋めることが大切なんだと思います。ユーザーに求められているレシピを出すと通常のレシピに比べお気に入りにされる率が高いとか、何かしら可視化できる要素があるはずなんです。そういう指標を中間地点で設けて、間をつなぐ作業が必要です。

天野:特にポジティブな結果が出たときにその裏付けのデータがあると受け入れられやすいですよね。

野村:見えると嬉しいですよね。自分のやっているものが会社にどう貢献しているのか。

天野:組織としては最初からそういう文化だったんですね。石井さんはいかがですか?

石井:もともと徹底的にデータを見る文化はありました。今は、データ重視しないとすべての背策が「〇」「×」「△」くらいでしか判断できなくなってしまいます。そうすると続けるべきなのかやめるべきなのか、どこを改善すべきかも検討が付かない。正しく施策の評価ができていないと、ひいては人事評価も適切に行うことは難しいと思っています。

分析結果をサジェスションで終わらせないためには?

天野:今週大手ゲーム会社のアナリストの人とお話したんですが「データを分析し見れる状態にしたものの、参考になったで終わってしまう」と。ただのサジェスションで終わってしまうと。皆さんの社内の雰囲気としてはいかがでしょうか。

石井:仮説が先にあるかは重要だと思います。データを闇雲に見て何かを発見しようというのは無理です。こういうユーザーにこういうニーズがあるがあるかもしれない、というのは人間が考えるしかないと考えています。

加藤:定量化できるものはすべてやりますが、特にオフライン施策は定量化しづらい。でも実施するからには「何かの数値を動かした」からであって、オフライン施策であっても事前に定量的なKPI設定します。うちの会社の場合データが使われないということはあまりないですね。

野村:一方でデータドリブンになりすぎるとデータが取れない意思決定にとたんに弱くなってしまうんですよね。これはデジタル出身者に結構多い傾向で、そこのバランス感覚は大事だと思います。

天野:先ほどTableauやSlackを活用してbotで見るとありましたが、外部ツールで便利だったものなどはありますか

加藤、野村、石井:ほぼ内製ですね。

天野:社内データをもとに各種施策に活用できているか事例を紹介いただければ。

加藤:プロモーションとストアのアセットの管理、プッシュ通知、獲得から課金までのカスタマージャーニーを最適化しています。施策というほどでもないですが、常にABテストはいろんなタイトルで走り続けています。

野村:ほとんどのことにデータを活用しています。広告出稿やCRMの施策結果はもちろん、どういうレシピが反応がいいとか、InstagramなどSNSで保存されやすいのはどういった投稿かなどすべてのデータを蓄積しています。データ環境さえ整備されれば、CRMの施策検討やカスタマージャーニーづくりなど、あとは使う人次第なので

石井:同じようにどの施策でも使っていますね。僕らで言うとクーポンを扱っていますが、このユーザーはどの事業社さんの、どのクーポンを使いそうか判断し、並び替えるなどもデータを元に判断しています。プロモーションにおいても、デジタル広告はもちろんTVCMでも細かくデータ活用しています。この枠のこの番組でこのクリエイティブを流したら、CPAがいくらだった、など。

天野:最後にデータを使って今後やっていきたいことを教えてください。

加藤:自動化を一層進めていきたいですね。私たちはゲーム以外にメディア事業もありますし、ウェブのプラットフォームもあるのでそれらのデータを統合して広告で活用していければなと。

天野:データを蓄積、活用においてお話を伺ったどの会社さんも進んでいましたが、今後は自動運転が本当に「自動」運転としていけるか、そしてそれをどうやって進めていくかがテーマになりそうですね。

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著者プロフィール:石徹白 未亜(いとしろ みあ)
ライター。ウェブサイトビジネスジャーナルでAppApeによる旬のアプリを聞く『アプリ四季報』連載中。著作に自身のネット依存の経験をもとにした『節ネット、はじめました』、男性向けスーツのすべてがわかる『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい』(ともにCCCメディアハウス)。