「あの時はこう言ったけど間違ってたね」と言える組織だからこそ生まれた、ヒットゲームの舞台裏

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「スマホゲーム市場ではヒットを出すのが難しい」

そういった声も少なくないため、参入する際にはどうしても『セオリー』を気にしてしまいます。

しかし、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』は、常識やセオリーを取っ払った企画や組織体制を考えた末、2019年のヒットアプリを代表するまでに成長しました。

「App Ape Award 2019」では、リリースして1年後の今でもヒットし続ける『ロマンシング サガ リ・ユニバース』の成功要因を制作過程や組織体制の話を踏まえつつ、振り返っていただきました。

登壇者紹介

株式会社スクウェア・エニックス
市川雅統氏
第一開発事業本部ディビジョン2 サガシリーズプロデューサー

市川雅統氏プロフィール
株式会社スクウェア・エニックス所属。 「サガ」シリーズプロデューサー。フィーチャーフォン/スマートフォン用タイトル『エンペラーズ サガ』、リマスター版『ロマンシング サガ2』『ロマンシング サガ3』、『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』、配信中のスマートフォン用タイトル『ロマンシング サガ リ・ユニバース』などのプロデュースを務める。

株式会社アカツキ
山口修平氏
IPプロデュース事業部事業部長 プロデュース&インキュベーション室 チーフプロデューサー

山口修平氏プロフィール
大手ゲーム開発企業に新卒入社後、国民的RPGシリーズのコアメンバーとして活躍。その後ソーシャルゲーム企業ディレクターを経て、2014年アカツキに入社。入社以来、著名IPタイトルのプロデュースや、自社IP『八月のシンデレラナイン』プロデュースでヒットを飛ばしている同社のヒットメーカー。2018年より新規IP創出に特化したPI室のチーフ・プロデューサーを務める。2020年よりIPプロデュース事業の事業部長も兼任。

【モデレーター】

株式会社MOTTO
佐藤基氏
代表取締役

佐藤基氏プロフィール
1984年生まれ。2011年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。入社後は一貫してモバイルビジネスのマーケティングを担当し、特にスマートフォンゲームのマーケティングは黎明期から現在まで約7年間経験。マーケティング部門の責任者を経て、2018年に独立し、株式会社MOTTOを設立。主にモバイルゲームやアプリのマーケティング戦略の立案と実行を支援。これまでにマーケティングとして関わったタイトルは「逆転オセロニア」など、100タイトルを超える。

2019年の大ヒットタイトル『ロマンシング サガ リ・ユニバース』(以下「ロマサガRS」)に注目して深堀りする理由

佐藤氏:スーパーファミコン時代からある『ロマンシング サ・ガ』というタイトルなので、もちろんスマホアプリ版としてリニューアルリリースするのは、ヒットタイトルの王道です。

僕はスマホゲームのお仕事をやってかなり長いですが、ここまでロマサガRSがヒットするとは思っていませんでした。

そんな中でロマサガRSの特徴と言えるものが大きく2つあります。


▼ロマサガRSの特徴▼

①初速がとても早かったこと
タイトルとしての成長がものすごく早かった。20日で1000万DLを達成するなど急激に成長しました。(※現在2000万DLを突破)

②未だに第一線でヒットし続けるタイトルであること
もうすぐ1周年を迎え、2年目を迎えるタイトルですが、未だにヒットし続けるタイトルということで異質でした。


『未だに第一線でヒットし続けるタイトルであること』についてさらに言えば、実はスマホゲームの市場の中でも特に珍しいことだと思います。

よくあるのが、最初はすごく成長するんだけど、すぐに尻すぼんでしまうようなタイトルです。

しかし、ロマサガRSはそうなっていない点で非常に注目しているわけです。

なぜロマサガRSは大ヒットタイトルになったのか

市川氏:佐藤さんがおしゃっている通り、正直ここまで多くの方に遊んで頂けるタイトルになるとは思っていませんでした。

それは社内も同様で、想定以上にヒットしたという反応でした。

「サガ」シリーズは、もともと濃いファンがが多く、ゲーム性は面白いのですが、ややゲームが難しいイメージがあるのが弱点でした。

普通のゲーム制作の現場では、『プロジェクトの目標』や『目指す場所』をDL数だったり売り上げの数字で定めるんですが、そういう切り口だけだと勝てないのではないかと考えました。

ちなみにアカツキの開発メンバーもサガファンが多く、代表の塩田さんも遊んでくれていたという背景があります。

だから、開発メンバーとは「「サガ」シリーズをもっと広げたいよね」という話はよくしていました。

ファイナルファンタジーやドラゴンクエストのように、誰もが楽しめるタイトルとしてどうしたらより広められるのかをみんなで話し合っていたんです。

山口氏:そうですね。僕らとしては、スマートフォンゲーム専門で制作している会社なので、スマートフォンゲームの流れだったり、ヒット作品を生み出してきたことでのノウハウはありつつも、逆にその積み上げてきたものに縛られないようにすることが注意していたことですね。

佐藤氏:以前まではユーザーの入り口がやや狭かったと言える「サガ」シリーズですが、ロマサガRSをリリース後、1年経って広がったと言えますか?

市川氏:そういう意味ですと、すごく広がったと思いますが、まだまだこれからだと思っています。

ゲームアプリの常識に囚われない考え方を重視したゲーム企画

佐藤氏:「サガ」シリーズの常識について、先程お話されていたのですが、具体的にどのようなものかをぜひ聞きたいです。

山口氏:そうですね。ロマサガRSを企画し始めたのは2016年頃です。

その頃のスマホゲームのトレンドというのは、オートプレイという触らなくても完結してしまうものでした。

しかし、今後はそれに対して、もっとじっくり考えて戦略的に遊ぶゲームが求められていくんじゃないかという仮説を立てていたという背景があります。

また、もともとのサガユーザーは頭を使って攻略するのが楽しいと感じる方が多いという点で、今後のトレンドにマッチするんじゃないかという考えを軸に持っていました。

佐藤氏:それが「サガ」らしさということですよね。

山口氏:そうですね。

市川氏:2016年の企画が立ち上がった時は、ゲーム業界では「◯◯という要素がないとスマホゲームとして成立しないんじゃないか」という言い方をする方が結構いたわけです。

例えば、マルチプレイが入ってないとダメだとかで、「ちゃんと◯◯入ってるの?」と確認をするような文化がありました。

しかし、ファイナルファンタジーやドラクエといったタイトルのような誰でも楽しめるものを目指しつつ、他のゲームに負けない作品づくりをするには、自分たちの強みを明確に持っておく必要がありました。

そこで今までの常識を取っ払って、割と自由に開発していたことが強みになったと言えると思いますね。

山口氏:そうですね。そういえば実は一回、セオリー通りの企画を市川さんにお見せして、ガラガラポン(組織の人員配置などを最初からやり直す、または複雑になってしまった問題を、一度ゼロにして考え直してみること)してるんですよね。

その時市川さんに「これは本当にサガなのか?」と突っ込んでいただき、僕らもよくよく考えてみると「確かにサガではないのかもしれない」という結論に至ってボツにしている過去があります。

市川氏:やっぱりそこの『サガらしさ』を追求する部分は結構話しましたよね。

今でこそ成功して重大な意思決定をポンポンと行って進んできたように見えるかもしれませんが、結構ギリギリまで悩んで答えを出していましたね。

「ソーシャルゲームっぽいけど、本当にこれでいいんだっけ?」という議論は幾度となく行ってました。

『サガらしさ』を追求する上で必要な組織論

山口氏:今日は『組織論』というテーマもあるので、少し組織についてもお話しようかなと思います。

普通は、あの時作成したセオリー通りの企画も時間をかけて作ったものだったので、作り上げたものを壊してまた作るのって結構難しいことなんですよね。

それでも、もう一度話し合って作り直す判断をしたこと、アカツキという会社でも作り直す判断を認めてもらえるだけの素地があったことは大きかったです。

この組織体制は、ロマサガRSを成功させる一つの要因になっていると思います。

市川氏:いろんなタイプのプロデューサーがいると思うんですが、山口さんと自分って徹底的に話すタイプなんです。

なので、「◯◯の機能を入れずに開発進めましょう!」という独断で指示をして引っ張っていくわけではないので、「ここって面白い?」「ここってなくても面白いよね?」という風に問いを投げかける形でチームとして進んでいきました。

強い言葉で「絶対◯◯だよね!」という話をすると引っ込みがつかなくなって、そのままズルズルと実装してしまいがちですすが、その雰囲気をなくし、「あの時はこう言ったけど間違ってたね」と言える風土があったからこそ、ロマサガRSをいい形に持って行けたのかなと思います。

山口氏:ついクライアントと案件元になってしまうところを、お互い真剣に話し合える関係性に持って行けたのは大きいかなと感じますね。

佐藤氏:とはいえ、お二人の中ですり合わせていく基準や指針があると思うのですが、それはなんでしょうか?

市川氏:僕たちはサガシリーズのそもそもの成り立ちなどをよく話していました。
よくあるスマホゲームとは違うものを作ろうと考えていました。

そのため、『サガのスマホゲームとはどういうものであるか』ということを柱に考えてきたように思います。

例えば「他のスクウェア・エニックスのタイトルが◯◯だからこうしよう」という考えはその時点で思考が停止していると思います。

山口氏:そうですね。サガとは?とか、そもそも論からすり合わせてを行っていたので、魂レベルですり合わせていくことが大切なんだと思います。

制作する過程でロマサガらしさが滲み出たエピソード

佐藤氏:ロマサガRSはまぎれもなく、2019年を代表するヒットタイトルになっていますが、それはサガらしさを追求したことによる結果だったと言えるわけなんですね。

市川さんは、ロマサガRSを担当される前もサガシリーズに携わっていると聞いていますが、これまでの過程でサガらしさを紹介できるエピソードはありますか?

市川氏:そうですね。僕はもともと『エンペラーズ サガ』というタイトルに携わっていていました。

その時、佐賀県とのコラボを思いついてやってみたり、信濃屋さんとコラボをして、サガのウィスキーを作ったりして、話題になればいいなぐらいで取り組んでいたんですが、イベントなどを開催する中で、ユーザーさんに触れる機会があったことに価値を感じたんです。

Note

  • 登壇スライドより

つまり、実際にイベントにきてくれた人の顔が見れるわけで、「こういう人達がサガを好きでいてくれているんだ」というのが分かることは、ユーザー調査をするよりも参考になる部分がたくさんあることに気づいたんです。

山口氏:以前ユーザー調査を行ったことがあるのですが、直接ユーザーの喜ぶ顔が見れる距離で得られる情報の方が情報量が多かったですね。

そうしたオフラインで得られる情報を大事にして、サガについて議論する材料にしていました。

まとめ

ここまで『ロマンシング サガ リ・ユニバース』をリリースするまでのお話をお伺いしました。

ロマサガRSを、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストのような誰にでも楽しんでもらえるゲームににするという高い共通目標を掲げながら、そこを目指す上でスマホゲームにおいても「サガらしさ」を妥協しないという軸をぶらさずに、徹底的に議論し尽くしたことが成功の鍵だということを語っていただきました。

また、クライアントと案件元という関係ではなく、1チームとしてお互いが真剣に話し合える関係性を作ったことが上記の徹底的な議論を生んだ背景にありました。
アプリゲームに限らない、作品作りの真髄をお聞かせいただきました。

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