企業のアプリ活用はユーザーにどんな影響をもたらす?顧客体験を作る際に最も重要な原点を振り返る。

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OMO(Online Merges with Offline)は近年非常に注目されるオンラインとオフラインの垣根を超えたマーケティング概念の一種です。

オンラインで集まるデータをオフラインで活用したり、オフラインで集まるデータをオンラインで活用したりとハイブリッドなマーケティング概念として注目されています。
今や顧客体験を最適化するのにOMOの概念なしには語れません。

「App Ape Award 2019」では「OMO最前線。顧客の気持ちを動かすアプリ体験」と題して、OMOがマーケティングの最前線ではどのように活用されているのかを議論しました。

【モデレーター】

株式会社サイバーエージェント
東樹輝氏
アプリ運用センター事業責任者

東樹輝氏プロフィール
1991年生。新潟県出身。神戸大学卒業後、2013年にサイバーエージェントへ入社。子会社でのWEBメディア事業立ち上げを経験後、広告代理店事業部に異動して大手DB系クライアントを担当し、アプリ・ウェブを横断したマーケティング戦略立案から実行までをメインに約5年間従事。2018年から海外支社の立ち上げに参画した後、2019年9月より現チームを設立し、主にリテール企業向けにアプリを活用した新規事業の提案・コンサルティングを行っている。

【スピーカー】

株式会社スノーピーク
リース能亜氏
サプライチェーン取締役執行役員 Chief Supply Chain Officer

リース能亜氏プロフィール
米国で大学を卒業、英国でMBA取得後、経営コンサルタントとして複数業界(電力・金融等)並びに分野(戦略立案・M&A・BPR・システム導入等)でプロジェクト実施したのちに、2017年末にスノーピーク入社。入社後は、経営企画・システムを含む管理部門全般を総括し、2018年のスノーピークアプリ開発のリーダーとして参加。一方で、スノーピークでは急速な売上成長・海外の戦略投資・複雑化する事業モデルといった事業背景をもち合わせる中、サプライチェーンのTo-Be構築の為に2019年よりサプライチェーンの統括として着任。

株式会社ストライプインターナショナル
澤田昌紀氏
メチャカリ部部長

澤田昌紀氏プロフィール
アパレル企業のノーウェアにて、「A BATHING APE」の販売・企画・生産に関わったのち、ゴルフダイジェスト・オンラインへ。2013年にストライプインターナショナルに入社し、EC事業担当を経て2015年にファッションサブスクリプションサービス「メチャカリ」を立ち上げ、現職。

メドピア株式会社
縄田愛美氏
コンシューマープラットフォーム事業部 兼 株式会社Mediplat(メドピア子会社)取締役

縄田愛美氏プロフィール
2015年に筑波大学国際総合学部卒業後、株式会社じげんに入社。求人事業部にて複数のサービスの事業開発/営業/マーケティング/ディレクションに従事。2017年9月にメドピアに入社し、新規事業を推進する他、子会社のMediplatでマーケティングを兼務。2019年6月にMediplatの取締役に就任し、ライフログプラットフォーム事業を推進。

アプリを活用して顧客体験を創造した3つの事例

東樹氏:昨今、OMOというワードが飛び交っているものの、顧客体験・顧客接点においてもアイディアが多様化していますし、そのアイディアを実現する際のテクノロジーも様々な手法がありますよね。
今回はスノーピークさま、メチャカリさま、メドピアさまの3社と実際の事例をご紹介していただきながら議論していければと思っています。
早速ですが、各社のご紹介を兼ねてアプリ活用の事例についてお話いただければと思います。

既存のバリューチェーンをアプリ化したスノーピーク


リース氏:まず現代社会の話をすると、現状ではオンデマンドの世界でなんでも手元にあるぐらい文明が進化してます。そんな中で、実際に人と繋がる接点というのが希少化しているというポイントをスノーピークは着眼点として持っています。

スノーピークの使命は、文明の進化に合わせて野遊びを体験していただくことで、人や自然と繋がりを作り、人間回帰してもらうことです。

実態としては、キャンプ用品をベースに展開しているアウトドアブランドとして、家から山までを複合的に体験化して創造しているブランドになります。

その中で「スノーピークのアプリの活用とは何か?」を考えた時に、既存のバリューチェーンをアプリ化することからスタートしました。
スノーピークの既存のバリューチェーンとは、『物販』のことです。

最初にアプリをリリースしたのは2018年3月。
現在はアクティブ顧客のほぼ100%のユーザーがアプリを使ってくれているぐらい普及してます。

「既存のバリューチェーンをアプリ化」とは、ニュース機能や顧客管理機能、購買などの機能をしっかりとアプリに載せるということです。
逆にいえば、「購入すればアプリをDLしない理由がない」ということになると思っています。

今後は野遊び体験などの顧客体験・顧客価値を、アプリをゲートウェイとしてどのように実現していくかが課題となっています。

現在、世界には40万人のスノーピーカーと呼ばれるファンがいるため、そうした熱狂的な顧客がもっとアクティブになるためのコミュニティをアプリを通して作っていければと考えています。

アパレルの新しいサブスクリプションサービス「メチャカリ」


澤田氏:今のアパレル業界は、縮小傾向にある産業だと言われています。
そんな中でアパレルにあまり夢がないなと思ってしまったので、新しい事業を始めなければいけないと思い『メチャカリ』という事業を始めました。

『メチャカリ』とは、服のサブスクリプションサービスで月額5,800円で新品の洋服が借り放題という事業です。
さらには60日間借りっぱなしでいると、その服は返却する必要がなくプレゼントしてもらえるというシステムです。

「そんな事業でどうやって採算を得ているのか」とよく聞かれるので、聞かれる前に答えますね。

最大の疑問は「お客様から返却された服はどうするのか」という点だと思います。

お客様から返却されて戻ってきた洋服は、自分達で作った2次流通(STRIPE CLUB USEDやZOZO USEDなどの中古販売)に回しており、そこで採算を得ている事業になります。

ユーザーと毎日接点が作れるプラットフォームアプリ「スギサポwalk」


縄田氏:当社が手掛けているのはスギ薬局さんと共同で開発した『スギサポ』というセルフケアサービスです。

『スギサポwalk』、『スギサポeats(イーツ)』、『スギサポ deli(デリ)』という3つのサービスを提供し、毎日の「食べる」「歩く」などの日常行為を中心に、楽しくお得に健康をサポートしています。

それぞれ、『スギサポwalk』は歩数記録のアプリ、『スギサポeats』は写真による食事記録のアプリ、『スギサポdeli』はブラウザベースのEコマースで管理栄養士が考案した食事を配達するサービスとなっています。

これらのサービスと、スギ薬局さんが全国に展開している1,100以上の店舗との間で“O2Oモデル”を構築しながら、予防医療サービスをスギ薬局さんのお客様を中心に展開し、セルフケアプラットフォームを作ることを目指しています。

この3つのサービスの中で中核を担っているのが、『スギサポwalk』です。

『スギサポwalk』は、歩いているだけでアプリ上で全国を巡っている気分になれるという、ちょっとしたゲーミフィケーションと、歩数に応じたポイントプログラムを組み合わせたサービスです。

アプリはどんな方にも使いやすいよう、極めてシンプルな設計を心がけたこともあり、スギ薬局さんのお客様の中心である30代後半~50代の主婦層にも広く使っていただいております。

2019年3月にリリースし、その9ヶ月後には50万DLを突破いたしました。特筆すべきはアクティビティの高さで、1日の平均起動回数は3.8回と毎日高頻度に顧客接点を作れるアプリとなっています。

さらに、来店時のポイント獲得や各種キャンペーンの実施等により、スギ薬局さんへの店舗へ誘導することにも成功しています。

アプリを活用した顧客体験を創るに至った経緯

東樹氏:3社とも業界は全く異なるのですが、アプリに関して先進的な取り組みをしている方々なので、事例以外にもどういう考えをもってアプリ活用を顧客体験につなげているのか思考プロセスもお伺いできればと思います。

早速ですが、アプリを使って顧客体験を作るに至った経緯をお伺いできますか?

顧客体験といっても事業によって体験設定はバラバラかと思います。
特に、日本国内ではアプリを使って顧客体験を進化させることをメインにしていない企業が多いと感じています。
そんな中でどのような経緯でアプリ活用に至ったのかぜひご紹介ください。

顧客体験をデジタル化するチャレンジ


リース氏:スノーピークの場合には、既存のビジネスモデルがあり、「既にある顧客体験をどうやってデジタル化していくか」というのがチャレンジとしてありました。

2017年からアプリを創る構想はあり、既に顧客体験がチャネルごとに複雑化しているというのが実態としてあったので、店舗やEC、イベントなど複数の事業で顧客と接点を持つ機会も多かったです。

そこで顧客に常に手元にスノーピークを携帯してもらい、「野遊びをもっと身近に感じてもらうことはできないのか」という課題からアプリ事業はスタートしました。

東樹氏:商品購入時の店舗・ECを通じてのみ、アプリユーザーを獲得しているのでしょうか?

リース氏:はい。スノーピークは、CMや広告などのPRをほとんど行わない会社なんです。そのため、リアルな接点を通じてアプリユーザーを獲得していきました。

購入体験の最適解としてハマった「アプリ」という選択肢


東樹氏:澤田さんはいかがでしょうか?

澤田氏:アプリを使うことには明確な理由がありました。
サブスクリプションモデルにする際に毎回Webブラウザを開いてログインする入り口は変というか、すごく違和感がありました。

また、普段ECを使う方に違った体験をさせてあげたかったという点があり、一度ログインしてしまえば、ログアウトする必要がない、加えて、サブスクリプションモデルなので最初に決済をしてしまえばECのようなカートに入れて決済するという流れは必要なくなる、という理由でアプリにしました。

服を借りるという操作に関してもワンタップで済むようになっていて、キャンセルしたければ24時までにキャンセルをすれば届かないというシンプルなUIになっています。

こういった体験はアプリでしか実現できなかったから、アプリでやるしかなかったんです

東樹氏:スノーピークさんとは全く異なる原点ですが、アプリのユーザー獲得は既存のお客様をアプリに誘導するというよりも、CMなどで獲得したのでしょうか?

澤田氏:そのとおりです。アパレルのサブスクリプションモデルを利用するユーザーは基本的に店舗には来ないことが多いです。違った性質のユーザーを獲得して市場を広げるという意味でも、アプリユーザーの獲得は店舗ではなくマス広告を利用しました。

顧客の日常に入り込んだサービスとなるために


東樹氏:最後、縄田さんはいかがでしょうか?

縄田氏:スギ薬局さんは今まで処方せん調剤や一般薬の販売、小売りをメインとした事業を中心に展開されていました。

そこで、弊社から、スギ薬局さんが持つ店舗や今まで培ってきた顧客基盤のプラットフォーム化を提案させていただき、オンラインで日常的に顧客との接点が生まれる、これまでにない予防医療サービスを両社で討議していきました。

もっと顧客の日常に入り込むようなサービスにするにはどうすべきか考え、メルマガやLINEのようなネットワーキングサービス、メディアなどではなく、「アプリ」にしようという着地になりました。

東樹氏:ありがとうございます。みなさん、目的が明確な状況でアプリを作られているんですね。

新しい顧客体験をどのように発想したのか

東樹氏:アプリひとつを作るにも、企画をして、仕様策定をして、開発をして、運用をして…と、結構ハードルが高いですよね。
皆さんはアプリリリースに乗り出す時に、どのような発想で物事を進めていきましたか?
また、大切にしたポリシーなどもあればお伺いしたいです。

「ユーザー目線」になることを突き詰めたスノーピーク


リース氏:まず、今ある顧客体験をどのように利便性と絡めていくかを考え、既存のバリューチェーンにフォーカスしたのがスノーピークの手法でした。

ギアの販売やアパレル販売などをやっていますし、「もの」に対しては永久保証をしていて、それでいてかなりの量をさばいている会社なので、複雑化している顧客設定を一元管理していくことは必要なのではないかというのが最初の着眼点でした。

大切にしていたことは「ユーザー目線」になること。既存のユーザーのカスタマージャーニーをいかにアプリ化するか、顧客体験をいかに邪魔しないアプリになるかを考えました。

「服を貸し出したらプレゼントしてしまう」という新たなアイディアで事業課題をクリアに


東樹氏:澤田さんはいかがでしょうか?

澤田氏:資産性が高いもので、例えば高級バックや時計などであれば、一般的にサブスクリプションだと使い回す方向にいきます。

サブスクリプションは、有形財と無形財の両方を扱うことができます。無形財の場合はNetflixやU-NEXTなどで、ユーザーが増えれば増えるほど儲かるという仕組みです。

しかしメチャカリの場合は、有形財のサブスクリプションのため、一筋縄ではいかないんです。

在庫は購入量よりも多く取り揃えないといけないし、借りられている間はさらにそれ以上の在庫を用意しないといけないためです。

低価格のサブスクリプションで服を貸し出す『メチャカリ』の最初の課題は、服の貸し出し後に服の価値がほぼ0に近くなってしまうことで、ここは非常に悩みどころでした。

さらには貸し出した服を返却していただいた後にケアして新たに貸し出すという作業にかなりのコストがかかってしまうという課題も発生してしまうため、事業自体が成り立たない構図になってしまいます。

そこで、上記の課題を解決できる仮説をいくつか立てて、データを取り、実現可能な解決案を見つけていったという感じです。

結果的に見つけることができた解決案「服を貸し出したらプレゼントしてしまう」というもので、それが成り立つのか、顧客体験として正しいものになるのかを検証しながら実現に向けて動きました。

事業としての発展を考え、ユーザーの日常に入り込むことだけを意識した


東樹氏:縄田さんは、どちらかというとアプリ運用のサポート側の立ち位置だと思いますが、いかがでしょうか?

縄田氏:顧客基盤を持ち、その顧客との接点を増やすということだけではなく、その先の事業へどう発展させていくかを考えながら、設計していきました。

例えば、マネタイズポイントとして、広告事業や『スギサポdeli』のような別のヘルスケアサービスなどを想定しておきながら、それらの事業基盤になるものは何かといった視点で、サービス設計をしました。

事業基盤の前提となるサービスを創りたい、と考えた時に、最も重要であるのが“ユーザーの日常に入り込む”ということであったので、まずはそれだけを意識して設計し、いかにアクティビティを高めたくさん起動してもらえるアプリにするかというところを考えました。

事業モデルと抱えている課題に沿ったアプリ作りが重要

ここまで3社の『顧客の気持ちを動かすアプリ体験』についてお話をお伺いしました。

3社とも事業モデルと抱えている課題・実現したい方向性をしっかりと定めた上でアプリを活用した顧客体験作りに取り組んでいます。

共通して言えることは、「アプリを活用すると顧客にとっての利便性はどこにあるのか」「アプリを通した顧客体験は正しいものになっているのか」の原点とも言える2つのポイントをとことん深ぼっている点ではないでしょうか。

アプリ活用が顧客体験に良い効果をもたらす極意を語っていただきました。

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