Wemade Online・スマートニュース・ぐるなび、“ユーザー起点”で考えるそれぞれのアプリの成長・向き合い方

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アプリ分析プラットフォームを「App Ape(アップ・エイプ)」手がけるフラー株式会社、国内最大級のアドフラウド対策ツール「Spider AF」を手がける株式会社Spider Labs、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を手がける株式会社プレイドの3社は2020年7月22日、「データから学ぶ、今求められるユーザー起点でのアプリの成長・向き合い方」と題したオンラインセミナーを開きました。

セミナーでは、ゲーム、フードビジネス、ニュースとそれぞれのジャンルの最前線でアプリマーケティング施策を展開する3人のキーパーソンがディスカッション。データの重要性や活用に向けた方策について話し合いました。

今回はセミナーのメインセッションレポートをお届けします。(敬称略、編集:App Ape Lab編集部・日影耕造)

株式会社Wemade Online
弥永 勝彦氏
運営室 室長

プロフィール:プレイステーション2の時代から運営系の業務に携わり、CSハードからPC、モバイルデバイスと時代の移り変わりを見ながら17年ほどゲーム運営の仕事を手がける。現在はマーケティングと事業企画がメインで、運営の現場からは少しずつ離れていきながらも「どうすれば、お客さんにゲームのことを意識してもらえるようになるか」を考え続ける。

スマートニュース株式会社
網谷 隆志氏
マーケティングマネージャ

プロフィール:新卒で銀行に入社して法人営業を経験。その後、株式会社サイバーエージェントで約10年間にわたりインターネット広告業務に携わる。2018年より現職に参画。デジタルプロモーションを中心とした獲得施策でアプリのユーザー拡大を牽引。マーケティングマネージャとしてオンラインとオフラインを横断した統合マーケティングに取り組んでいる。

株式会社ぐるなび
平松 巧三氏
プロダクトデザイン部 プロジェクトマネジメントグループ シニアリーダー

プロフィール:前職楽天でのアプリディレクション・UI設計を経験を経て、現職ぐるなびではアジャイル開発でのスピーディなアプリ改修により大幅に数値改善。昨年度からはKARTEを活用したグロースハックに取り組んでいる。

コロナでアプリの利用時間に変化はあったのか?

弥永:まずはアイスブレイクとして、App Apeで蓄積するデータから2020年1月〜6月の1MAUあたりの月別アプリ利用時間の推移を見て意見を交わしたいと思います。

[データ元: App Ape (国内約15万台のAndroid端末を分析)/アクティブ数はApp Ape 推定による ]
[MAU (Monthly Active Users):そのアプリの対象期間における、月間アクティブユーザー数で、月に一度でもそのアプリを起動したユーザーの数]

App Apeのデータでユーザーあたりのアプリの利用時間を見ると、3月から5月にかけて1MAUあたりのアプリ利用時間は明らかに増加し、緊急事態宣言が解除となった6月に減少していることが分かります。コロナウイルスの感染拡大が大きな要因となったことは間違い無いでしょう。

[データ元: App Ape (国内約5万台のAndroid端末を分析)/アクティブ数はApp Ape 推定による ]
[MAU (Monthly Active Users):そのアプリの対象期間における、月間アクティブユーザー数で、月に一度でもそのアプリを起動したユーザーの数]

カテゴリー別で見ると、ヘルスケア・フィットネスという「いのち・健康」に直結する分野への関心が高まった様子がデータに表れています。コロナウイルスという健康に影響を及ぼす事象がやはり作用した形ですね。屋内で使うエンタメ系と計画的に時間を消費するアプリが多いカテゴリーも伸びていますね。

コロナウイルスの影響が顕在化したこの半年の間に、スマートニュースとぐるなびのそれぞれアプリを取り巻く状況にどんな変化がありましたか?

網谷:スマートニュースの場合、App Apeのニュースカテゴリーのアプリ利用時間の増減データとかなり近い動きをしていました。

具体的には、3月と4月は1ユーザーあたりのアプリの利用時間、DAUがかなり伸びました。新規ユーザーの増加も順調でした。4月はコロナに関する新しい情報へのニーズの高まりから数多くの人々にニュースを見ていただいた形です。

コロナをきっかけに、スマートニュースは実はローカル訴求でユーザーが増えました。コロナの影響が顕在化する前の2019年にスマートニュースは「47都道府県チャンネル」という新コンテンツを追加しました。このチャンネルがコロナによるローカルな地域情報へのニーズの高まりにマッチしました。ローカル訴求の広告も出稿し、ユーザー増加につながりましたね。

App Apeのデータを見ると、5月に入ってニュース&雑誌が減少に転じた一方で、エンタメ系が大きく伸びたのが興味深いです。「ウィズコロナ」の余暇時間の新しい過ごし方・楽しみ方を人々が模索し始めた様子が想像できますね。

弥永:なるほどですね。人々の生活が”自粛スタイル”に慣れていくに従って、アプリの利用頻度が増加していったという解釈もできるかと思います。

網谷:緊急事態宣言に伴うリモートワークの増加もアプリ利用に大きく影響していそうですね。通勤がなくなったことで朝の時間帯の利用が顕著に減ったアプリもあると思います。

平松:ぐるなびのアプリはフード&ドリンクにカテゴライズされます。同カテゴリーは5月をピークに一貫して伸び続けていますが、これは店舗営業の代替としてデリバリーやモバイルオーダー、テイクアウトサービス機能を有するアプリが需要・供給ともに大きく伸ばしたためです。

ぐるなびでも近隣でテイクアウト可能な店舗を地図上に表示するなど社会の状況に対応した機能の追加を続けています。今後はこの機能をどれだけユーザーに浸透できるかが課題です。

弥永:コロナの状況にかかわらず、スマートニュースとぐるなびは基本的にそれぞれどのような市場・競争環境にあるとお考えですか?

網谷:スマートニュースの場合、既存のニュースアプリが競合にはなるのですが、クーポン機能などアプリがカバーするカテゴリーを広げているのに伴い、競争環境も大きく変化しているのが現状です。

クーポンを導入しているという観点では、ペイメント系のアプリも競争相手といえるかもしれないです。スマートニュース自体がニュースだけでない幅広い情報を提供するようになった結果、競合関係や対面する市場環境も変化しています。

弥永:なるほどですね。”近所”という目の向け方ですね。

平松:ぐるなびや競合各社は“ネット予約”が収益の大きな柱となっています。しかしネット予約というのはなかなか差別化がしにくいサービスでもあります。

違いが出しにくい中、新しい付加価値や新機能、どんなプラットフォームを活用するかに血道をあげていました。コロナに伴う”パラダイムシフト”で違いをいかに早くより鮮明にしていくかが勝負になってきています。

データの分析基盤の整備にかかる時間と導入するツールは?

弥永:本題に入りましょう。それぞれのアプリのデータの分析基盤の整備に実際にどれくらいの期間がかかりましたか?また、実際にどういったツールを導入していますか?

平松:ぐるなびは創業20年以上になるのですが、その間にものすごい量のデータが蓄積されました。一方で、データの使い方についてはまだまだ”途上”にあります。

ウェブについては今までは各事業部ごとにグーグル・アナリティクスなどでそれぞれ分析していました。

全社で統合的にデータを集めて、アナリストに依頼しなくてもMAツールなどを使って現場で分析して、すぐにアクションを起こすことができるよう整備が進んだのはごく最近のことです。ただ、それもまだまだ整備途中ですので、時間がどれくらいかかったのかというご質問に対しては「まだまだかかっている」とお答えするしか無いのが現状です(笑)。

アプリの観点では、導入したKARTEにデータを蓄積してKARTEの中で分析できており、こちらはデータ分析基盤が整備されつつあります。アプリは今、アジャイル開発で改善しています。スプリント(新たな機能を開発するための定められた期間)ではリソースの半分をUIの改善に充て、残りの半分をKARTEのトラッキングの整備に割いています。データの分析にかなり注力しています。

[KARTEの概要資料より引用]

弥永:データ分析の基盤としてKARTEを導入しようと思ったきっかけは何でしたか?また、導入の意思決定から実際に使えるようになるまでの期間はどれくらいでしたか?

平松:以前からKARTEの評判は聞いていたことに加え、プレイドの代表と弊社役員がもともと知り合いだったご縁でデモンストレーションをしていただいた際にデータ分析の観点から「これはいいぞ」と確信し、導入を決めました。

その後、予算確保や費用対効果の提示などに時間をかけましたので、導入決断から最終的にりん議が通って実際に導入するまでは約半年ほどかかりました。

弥永:組織として導入を決めてから実際に現場に導入される時間はどれくらいでしたか?

平松:アイドリングと本格運用の境目が無いのでなかなか難しいのですが、肌感覚では3〜4カ月ほどで本格運用が始まった感じですね。

弥永:業務改善PDCAにKARTEが綺麗に組み込まれて導入された感じなのですね。網谷さんはいかがでしょうか?

網谷:分析基盤に関してスマートニュースは実は私の入社時点で整っていましたので、基盤整備までの時間はなんとも言えないというのが正直なところです。

データを分析するためのツールは「Chartio(チャーティオ)」というBIツールを導入しています。Chartioの中に目的別ダッシュボードがあって、アプリ内でのユーザー行動集計データをほぼ見られる状態となっています。新規機能の追加や新たに見たいデータ軸が生まれた際にはその都度ダッシュボードを作って見ています。

弥永:なるほどですね。

網谷:私が入社してから導入したツールとしては、アドフラウド対策ツールの「SPIDER AF」があります。

[Spider AFの概要資料より引用]

スマートニュースはクーポンなどで他社様のブランドロゴを使わせていただいているため、ブランドセーフティーをものすごく大切にしています。

ユーザー獲得競争が激化する中、ブランドセーフティーを担保しながら顧客へのリーチをもっと増やすため、CPIメニューをトライアルするにあたってフラウド対策をしっかりした上で実施しようと導入しました。

導入にあたっては、スマートニュースが広告計測ツールとして使っている「Adjust」にSpider AFを紐づけるだけでしたので、導入時間自体は5分くらいで完了しました。

弥永:(ツールを)入れると決めたらすぐに導入できた感じですね。

網谷:その通りですね。CPIメニューの運用をお願いしている代理店さんが直接SPIDER AFの管理画面を見られるようにしているので、それほど工数をかけずにしっかり対策ができている状態です。

導入から1カ月でまず衝撃的だったのが、最初に配信したCPIメニューの80%がフラウドだったことがSpider AFで判明したことです。導入費用をこれだけでペイできました。

何もやっていないと怪しいデータに気づくことは難しいです。そうなると全体のポートフォリオやコンバージョンの把握自体が怪しいものになってきて、事業がどんどん間違った方向に進んでしまいます。

アドフラウド対策ツールでノイズを排除して、きちんとしたデータを見ることができたことは、導入してすごくよかったメリットだなと思っています。

アドフラウドは人によって捉え方にすごく温度差があるように思います。「そんなの無いよ」という人もいれば、「いや、絶対対策するべきだ」という人もいます。

しかし、実際に対策をしてみると、「アドフラウドはかなり蔓延しているなという意識で臨むべきだ」と、自分の中の前提条件が大きく変わりました。

弥永:ノイジーなデータでは意識決定をミスる可能性がありますし、これだけアドフラウドが蔓延している中で広告を回すとなると、まずはフラウド対策をした上でその後の展開を考えるということをやらないと施策の根拠がおぼつかないですものね。それにしても、80%ですか…。

網谷:最近別のCPIメニューも試したのですが、そちらでもフラウドが50%でした。

弥永:それはたまらないですね…。フラウド対策をすれば、広告効果が可視化できるというのは大きいですね。本当にデータを揃えるというのは重要ですね。

網谷:そうですね。Wemade Onlineはいかがですか?

弥永:弊社では「App Ape(アップ・エイプ)」を使っています。

[App Apeの概要(セミナー資料より引用)]

弊社は海外のタイトルを日本に持ってくるパブリッシング事業が柱ですので、今現在の日本の市場を把握することがまず必須のテーマとなります。市場理解をおろそかにして海外のタイトルを適当に持ってくるとだいたいすべって大失敗してしまいます。

サブジャンルやサブマーケットのさらに下部にマーケットがあるという認識でユーザーの需要にどんなものがあるのかを入念に調べて掘り起こすのが事業企画の仕事となっています。

App Apeにはアプリの性年代別構成と同時所持アプリ、競合アプリの利用者が他にどのようなアプリを使っているのかといった情報が蓄積しています。そのデータを使っておおよそのユーザーのゲームに対する認知状態を推測してポジショニングを作って、どういうところに投下するのか、何と戦うのかなどを事前に検証した上で、実際にどれくらいの規模のビジネスを目指すのかを意思決定しています。

パブリッシングビジネスにおいて一番最初に調べるべきなのは市場環境です。その市場環境を調べる調査手段として、App Apeを使っています。ちなみに、導入決定から1週間程とスムーズに利用を開始できました。

ロイヤルユーザーを判別する指標とは?

弥永:それぞれデータ分析をする上で重要視しているKPIで独自だと思うものはありますか?また、ロイヤルユーザーを表す指標はありますか?

平松:飲食に関わるビジネス独特のものなのですが、ユーザー側のMAUやCVでだけでなく、掲載店舗数、そのうちの予約対応店舗数、ポイント対応店舗数、当日の予約を受け付けている店舗など、店舗側のKPIもユーザーのUXやCVに関わるKPIとなります。

ロイヤルユーザーを表す指標としては、通常の検索などの利用以外に、ブックマークしている、ある行動を達成するとポイントがもらえるポイントミッション利用者など副次的な機能をいかに使ってくれているのかが重要になります。

網谷:広告の費用対効果を測る指標としてはCPIや継続率を加味したCPAなどですが、ロイヤルユーザーという観点ではスマートニュースは別途調査をしています。

ロイヤルユーザーというのは通常、利用頻度が上がっていけばヘビーユーザー、頻度が下がればミディアム、ライトとなっていきます、しかし、ヘビーユーザーだとしてもアプリに対して好感を持って使ってくれているかというと必ずしもそうではありません。他のニュースアプリもあるけど惰性でなんとなく使っているというユーザーもかなり存在します。

そこで、好感度が高いユーザーと低いユーザーを見分けるために定期的にアンケート調査などをやっています。

弥永:アンケートはどのようにして行っているのですか?

網谷:外部のリサーチ会社を利用しています。アンケート自体はユーザーだけでなく、非ユーザーにもとって、ブランド指標を調べています。

弥永:なるほどですね。私たちは“流出入の均衡点”という指標を持っています。新規登録者がアクティブユーザーとして流入したあと、徐々に流出していくのですが、一定期間が経つと再び復帰してきてアクティブユーザーが減らない状態が生まれます。

その何十日か後にくる“流入と流出の均衡点”を高めて早めるということができれば、あとは流入が多ければ運営は成功する、といった考え方です。この指標はあまりないのではと思います。

ロイヤルユーザーの判別は、やはり課金したかどうかですね。課金することでユーザーの認知は大幅に変容しますし、リテンションとその後の活動指標も大きく変わってきます。

アプリを活用しているユーザーの状態をデータから読み取るには?

弥永:ユーザーがアプリを楽しんでいたり、アプリをきちんと活用していたりする状態はどういうデータから読み取っていますか?

網谷:アプリをその人が使っているのかどうかはデータから見ることが可能です。しかし、本当にその人が楽しんでいるのかどうかはユーザーログデータだけでは見えてきません。

そこでアンケートリサーチをしたり、アプリのレビューを見たり、ユーザーのSNS投稿などを確認したりしていますね。特にツイッターはユーザーの「本音」がよく見えるのでスマートニュース関連の投稿を自動で拾ってくる仕組みを作ったりしてウォッチしています。

平松:網谷さんと一緒で定性調査のデプスインタビューや行動観察調査を元に把握しています。ユーザーの状態把握はKARTEの「カスタムスコア」を活用できれば一目瞭然ですので、今後は既存の定性調査と掛け合わせることでアプリを楽しんでいる・活用している様子をより詳細に把握できると見ています。

弥永:Wemade Onlineでは、用意しているコンテンツをどれだけ満遍なく使ってくれているのかという「回遊度」のようなものを見ています。追加したコンテンツに加え、これまで作ったコンテンツも含めて満遍なく利用してもらえていることが重要だからです。

コンテンツごとのユーザーの利用動向を見て、総合的にユーザーの利用動向が上向いたのかどうかを判断しています。

ユーザーがロイヤル化する際の分岐点はあるのか?

平松:年間予約回数が一定回数を超えるとロイヤル化していると判断しています。ログインして予約しているのか、ポイントの利用残高も分岐点ですね。

網谷:最初からロイヤル化を狙う場合と、中長期でロイヤルユーザーになってもらう場合の2つのケースがあります。前者について事例を挙げると、スマートニュース内の「乃木坂46チャンネル」に情報がまとまっていることを理由に訪れるユーザーは、欲しい情報を毎日見られることからインストールして早期にロイヤル化しやすい傾向があります。

一方、クーポンを目的にインストールをしたユーザーは、お店に行くタイミングなどでしかアプリを開かないなどなかなかロイヤル化しにくいケースもあります。インストールしてもらった後にいいニュースをレコメンドしたりお得情報をプッシュしたりと時間をかけてロイヤル化するといった形で分かれてるイメージですね。

弥永:ロイヤル化している、していないということを指標で判断していますか?

網谷:スマートニュースでは一定期間内での起動日数によって、ヘビー・ミディアム・ライトのような形でユーザーのロイヤルティーを区分していますね。

弥永:さまざまな視点から各社のデータ活用の実際を学ぶことができました。本日はありがとうございました!